トランプ「口止め料」裁判、最初の証人はタブロイド王デビッド・ペッカー氏か

30

先週からスタートしたトランプ前大統領の「口止め料」裁判は、陪審の選定を終え、22日から冒頭陳述に移ると報じられている。

事件は、ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏に不倫関係を口外させないために、当時弁護士だったマイケル・コーエン氏を通じて2016年の選挙戦終盤に支払われた13万ドルに関連するもので、検察はトランプ氏はコーエン氏に分割で払い戻す際に、請求書や内部記録を「詐欺やその他の犯罪を隠蔽する意図」を持って改ざんしたと主張している。

トランプ氏にかけられた罪状は34に上る。いずれも「第1級の業務記録を改ざんした罪」で、検察は、トランプ氏は払い戻しを法的サービスの支払いとして虚偽記載し、それには連邦選挙資金法の違反を隠蔽する意図があったとしている。

検察はトランプ氏がSNSなどで攻撃する可能性を理由に証人の順番を明らかにしていないものの、ニューヨークタイムズは、最初に証言台に立つ証人はタブロイド誌「ナショナル・エンクワイアラー」を傘下に持つ出版企業アメリカン・メディアInc.(AMI、現在のA360 Media)のデビッド・ペッカー元CEO兼会長だと伝えた。

昨年4月に提出された公訴事実を記した裁判資料には、ダニエルズ氏の他に2人の人物に対する口止め工作が挙げられており、ペッカーの関与が詳述されている。

Advertisement

そのうちの一人はトランプタワーの元ドアマンで、2015年後半にトランプ氏に隠し子がいる話を売りつけようとしていることを察知したペッカー氏は、交渉の末、3万ドルで独占権を買い取ることで合意に至った。なお、ペッカー氏はこの数ヶ月前にトランプタワーでコーエン氏とトランプ氏と協議を行い、トランプ氏にとって選挙に不利となる情報を探してコーエン氏に連絡するという、キャンペーンの「目と耳」として機能することを約束していた。

ドアマンの話は後に虚偽であることが判明し、ペッカー氏は契約を破棄しようとしたが、コーエン氏は選挙が終わるまで維持するよう要求。ペッカー氏もこれに従った。

二人目はプレイボーイの元モデルだったカレン・マクドゥーガル氏の不倫話で、トランプ氏およびコーエン氏と協議を繰り返した上で、ペッカー氏が15万ドルを支払い買い取った。条件には、口外しないことに加え、マクドゥーガル氏を雑誌の表紙記事で取り扱うといったおまけもつけた。

払い戻しの方法について、コーエン氏が新たに設立したダミー会社に、AMIが不倫話の権利を12万5,000ドルで譲渡することで話がまとまった。しかし約束が履行される前に、ペッカー氏はAMIの法務顧問と相談の上、コーエン氏に譲渡契約の無効を通達したとされる。

なおコーエン氏は2018年に8つの連邦罪で起訴、有罪を認め3年の実刑判決を受けた。罪状は脱税や銀行への偽証に加え、選挙資金法への違反が含まれた。口止め料が過度の選挙献金、違法な企業献金当たるとされた。

コーエン氏に関連してペッカー氏も捜査対象とされたが、マクドゥーガル氏への支払いを認めるなどの条件と引き換えに、検察との間で訴追を免除する合意が成立した。