ニューヨーク市では22日、市長選予備選挙の投開票が行われた。23日午前1時の時点ではブルックリン区長のエリック・アダムス氏が245,479票(30.9%)でトップとなっている。
2位以下は、公民権の弁護士のマヤ・ワイリー173,233票(22.3%)、前衛生局長のキャスリン・ガルシア154,286票(19.7%)、アンドリュー・ヤン89,912票(11.5%)、スコット・ストリンガー89,912票(5.1%)となっている。
エリック・アダムス氏とは?
エリック・リロイ・アダムス(Eric Adams)氏は、1960年9月1日、ブルックリンのブラウンズヴィル生まれ。食肉処理業の父リロイと、ハウスクリーナーとして働く母ドロシーの間の4番目の息子で、クイーンズのサウスジャマイカで育った。15歳の時、警察官から兄弟とともに暴行を受け、これが後に、ニューヨーク市警察に入ることを目指すきっかけとなった。
ニューヨーク市立大学でデータ処理を専攻して準学士号を取得。その後、ジョン・ジェイ・ カレッジ・オブ・クリミナルジャスティスで刑事司法を学び、学士号を得た。マリストカレッジでは行政学で修士号を取得した。
1984年にニューヨーク市警察学校を卒業し、交通警察局の勤務を経て、ニューヨーク市警察の警察官になった。22年間勤務し、警部まで務めた。警官時代から活動家として注目を集め、1995年に現役警官から成る組織「100 Blacks in Law Enforcement Who Care」を設立し、警官による暴力や人種プロファイルなど、警察の黒人コミュニティに対する取り締まりの改革を訴えた。
2006年にニューヨーク州上院議員に当選。2013年に有色人種で初めてブルックリン区長に選ばれた。2017年に再選を果たしている。
2016年に2型糖尿病を患った。左目の視力を失い、手足の神経障害に襲われたが、植物由来の食事療法を用いて、3カ月で病を改善させた。これをきっかけに、予防医療やウェルネスをニューヨーカーに啓蒙する個人的なミッションをスタート。市のプロアクティブな公衆衛生の取り組みや、学校や健康リスクの高い低所得地域での教育活動の推進に努めている。プラントベースの料理本も発売している。
アダムス氏が当選の場合、昨年死去したデービッド・ディンキンズ(David Dinkins)氏に次いで、2番目のアフリカ系アメリカ人の市長が誕生することとなる。
住所不定?
今月初め、ポリティコの調査記事をきっかけに、アダムス氏の住まいに関する疑問が持ち上がった。
アダムス氏は、公式にはプロスペクトハイツにある家を登録していたが、実際には10年以上住んでいなかった。報道から数日後、アダムス氏はブルックリンのベッドスタイに持つ物件の地下にある部屋が主たる住まいだと説明。記者らを家に招き、会見を行なった。
しかし、家族写真が飾られていないことや、冷蔵庫にサーモンやヴィーガン以外の食材(アダムス氏は息子のものと説明)があることから、ネットでは信じられないとの声が相次いだ。さらに近隣住民は、アダムス氏が住んでいるとは知らなかったとメディアの取材に答えている。
なおアダムス氏は先月、NY1の取材に、3月末以来、パンデミック対応のために区庁舎に寝泊まりをしていると話している。
アダムス氏はこのほかに、パートナーのトレーシー・コリンズさんと共同でニュージャージー州のフォートリーにコンドミニアムを所有しており、このことからライバル候補からEZ Pass(アメリカ版のETC)の記録の提出を求める声も上がった。
なおポリティコは、市長選に関するZoomのフォーラムで、ほとんどの候補者の背景は一貫しているのに比べて、アダムス氏は背景が19種類あったと指摘している。