8日夜、ニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事が最も信頼を寄せているとされる秘書官、メリッサ・デローサ氏の辞任報道が流れた。ツイッターにシェアされた声明で、デローサ氏は「過去10年、ニューヨークの人々に仕えたことは人生で最高の名誉だった」と表明。「最も困難な時のニューヨーカーの回復力、強さ、楽天主義は、いつも私を奮い立たせた。個人的にはこの2年間、特に過去数週間のコロナがらみのノンストップの仕事が、感情的、精神的にも挑戦だった」と述べつつ、クオモ知事と同僚らに「永遠に感謝する」と発表した。辞任の具体的な理由については語らなかった。
辞任の表明は、州司法長官によるクオモ氏のセクハラ調査報告書の公表からわずか5日目のことだった。
報告書には、クオモ氏の11人の女性に対するセクハラに加え、有害な職場環境の醸成や被害を訴え出た女性に対する報復に果たしたデローサ氏の役割も記された。デローサ氏の名は200回近く登場しており、告発者の一人、リンジー・ボイラン氏への支持を表明したスタッフに電話をかけ、情報を集め、会話を記録するよう元スタッフに指示していたことなどが明らかにされた。
クオモ氏は、女性らに不適切に触れたことはないとセクハラを否定しており、ジョーク、習慣的なハグやキスが不適切と誤解されたと主張。クオモ氏の弁護士は、調査には偏見があり、拙速でずさんだと非難している。
ただし、クオモ氏の辞任を求める声は高まっており、ナンシー・ペロシ下院議長、バイデン大統領も辞任をすべきとの考えを明らかにしている。
報告書がクオモ氏周辺に及ぼす影響も大きく、セクハラの糾弾や男女間の平等を求める慈善組織「Time’s Up」の会長で著名な弁護士、ロベルタ・カプラン氏は9日、自ら会長職の辞任を発表した。
報告書によると、カプラン氏は、ボイラン氏の人格攻撃を意図した論説文の草稿をレビューしていた。論説は最終的には公開されなかったが、弟でCNNのアンカー、クリス・クオモ氏や、国内最大のLGBTQのロビー団体「Human Rights Campaign」のプレジデント、アルフォンソ・ディビッド氏、Time’s Upの役員ティナ・チェン氏らも助言を求められていた。
クオモ氏 知事継続は困難か
ニューヨークタイムズは9日、情報筋の話として、デローサ氏は、クオモ氏が知事にとどまる道が絶たれており、これ以上、公に擁護するつもりはないと考えていると伝えた。
前日には、被害女性の一人、秘書のブリタニー・コミッソーさんが、オールバニ郡保安官事務所に被害届けを提出。刑事訴追の可能性が浮上した。さらに先述のボイラン氏も、クオモ氏や側近が自身の中傷を試みたとして、提訴する計画を明らかにしている。
一方で、The Cityは、クオモ氏は州の幹部職員に対して、弾劾の話をやめさせれば、4期目出馬の断念を約束するとの話を持ちかけたが、誰からも受け入れられなかったと報じた。デローサ氏も最近、行政府の職員に対して、弾劾の話を鎮める法的戦略を求めていたという。
この間にも州議会の弾劾の協議は着実に進行している。
9日午後、下院司法委員会は会合を開き、知事に対する弾劾手続きの下準備について話し合いをを行った。同サイトによると、4時間の会合を終えた後、チャールズ・ラヴィン(民主党 ロングアイランド)委員長は手続きの終了は間近で、弾劾訴追の是非を問う下院の採決まで数週間かかるとの見通しを示したという。
ただし、クオモ氏が弾劾手続きに関して裁判に訴える可能性もあるといい、ラヴィン議員は「最善の訴追を起こす立場になければ、彼が勝つ可能性もある」と慎重を期す姿勢を強調した。
司法委員会は、下院にクオモ氏の弾劾を推薦する前に公聴会を開き、セクハラや弾劾の専門家の証言を求める予定だという。
一方、州最高裁の判事とともに陪審員役を担う上院は、弾劾プロセスをナビゲートできる経験ある弁護士を雇う協議を行っているという。
下院が弾劾訴追を決定した場合、弾劾審理の間は、自動的にキャシー・ホークル副知事がクオモ氏に変わって知事を務めることになるという。