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実は仲良し?クオモとトランプの意外な関係

11人の女性からセクハラを訴えられ失脚した、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事(63)。今月24日に正式に辞任するが、元秘書の女性から刑事告訴されているほか、高齢者施設の新型コロナ死者数を過少報告したとされる問題も未だ解決せず、問題は今後も尾を引くと見られる。

そうした中、今月12日、トランプ前大統領(75)がクオモ氏の辞任発表後初めて一連の騒動に言及。自身の政治活動委員会「Save America PAC」を通じた支持者宛てのメールで、「アンドリュー・クオモは大問題」「彼は完全なルーザーだ。ニューヨークにとっても国全体にとっても、彼がいない方が良い」と徹底的に非難した。

両者の対立は、昨年春のパンデミック対応をめぐる応酬が記憶に新しい。ニューヨーク州で新型コロナウイルスの感染者が増え続けた頃人工呼吸器が不足し、クオモ氏は「連邦政府の協力なしには確保できない」と苛立ちを募らせた一方、当時大統領だったトランプ氏は、「事前に確保しておくべきだった」と一蹴するなど、両者は激しく対立した。

ただ、トランプ氏は当時「基本的に、クオモ知事とはうまくやっている」と強調してもいた。当時の政府職員によると、パンデミック初期に全米の注目を浴びたクオモ氏の記者会見はホワイトハウスでも一目置かれ、率直な語り口と戦略をトランプ氏も参考にしていたという。通常午前11時半頃に行われるクオモ氏の会見とかぶらないよう、ホワイトハウスは会見の時間を夕方にずらしたとも伝えられている。一方のクオモ氏も、表向きには対立姿勢を見せつつ舞台裏ではトランプ氏と1日数回に渡って対話したこともあったという。

実は2人は共に、ニューヨーク市クイーンズ区の出身。トランプ氏が大統領に当選する以前は共にニューヨークで活躍する著名人だったが、2018年、クオモ氏が知事3期目を賭けた選挙活動中、トランプ氏に向け「私はあなたの30年来の知り合いだ。口のうまいセールスマンとして多くの人を騙してきたようだが、私は騙せない」と意味深なメッセージを述べたことがある。実際、クオモ氏が若い頃からトランプ氏と交流があったことを示す、知る人ぞ知るエピソードが幾つか残されている。

トランプ氏 クオモ氏に恋人を紹介

Donald Trump and second wife Marla Maples

1990年、クオモ氏がロバート・ケネディーの娘、ケリー・ケネディーと結婚することになり、話題を呼んでいた。ちょうどその頃、トランプ氏は最初の妻、イバナさんとの離婚話をめぐってタブロイド紙を騒がせていた。クオモ氏の結婚直前に開かれたバチェラーパーティーで、トランプ氏はビデオメッセージを送り、「もう羽目を外せないぞ」などとアドバイスを寄せたことが知られている。

ジャーナリストのウェイン・バレット(Wayne Barrett)氏が記したトランプ氏の伝記本「Trump: The Deals and the Downfall」には、1989年のクオモ氏の誕生日パーティーにもトランプ氏が立ち寄り、30分ほど一緒に過ごしたことも明かされている。

この数年後には、クオモ氏とニューヨークで出くわしたトランプ氏が、「見せたいものがある」とクオモ氏を自分のリムジンに案内し、当時ガールフレンドだった2番目の妻マーラ・メープルズ(Marla Maples)さんを紹介したというエピソードもあるなど、社交辞令よりも一歩踏み込んだ関係にあった様子をうかがわせる。

世代を超えたつきあい

実はトランプ氏とクオモ氏の関係の始まりは、クオモ氏の父親で1983年からニューヨーク州知事を3期務めたマリオ・クオモ氏の代にさかのぼる。

マリオ氏が知事に就任した1980年代前半、トランプ氏はすでに不動産業で成功を収め、ニューヨークの大口政治献金者にも名を連ねていた。当時、クイーンズにスタジアム建設を目論んでいたトランプ氏は、マリオ氏の友人が経営する法律事務所と顧問契約を締結。その後ほどなくして、当時まだ20代だったマリオ氏の息子、アンドリュー・クオモ氏が、事務所のパートナーとなっている。後に顧問契約が公になった際、トランプ氏は事務所に「非常に大きな案件を任せている」と発言しており、利益相反行為だと議論を呼んだこともある。

前出のバレット氏の著書によると、1989年までにトランプ氏は法人としてマリオ氏の最も大口の献金者となっていた。公の場で2人が一緒に現れることも多く、この年、オールバニで行ったトランプ氏主催の自転車レース「ツール・ド・トランプ(Tour de Trump)」では、会場に顔を出したマリオ氏が、サインをねだってきた少年に、知事選に出るなら「必要なものが2つある。メイク道具と、ドナルド・トランプと会話して新聞に載ることだ」と教えたという逸話がある。

ただマリオ氏がトランプ氏と個人的に親しくしていた様子はなく、むしろ苦手なタイプだったと、マリオ氏に近い人物は語っている。一方で大口献金者だっただけに、クオモ親子とトランプ氏は近しい関係を保っていたという。

一度は関係悪化も、再び大口ドナーに

1990年代中盤になると、マリオ氏が知事を退任。一方で息子のアンドリュー・クオモ氏がクリントン政権下で住宅長官に選出され、政治の表舞台に立った。当時トランプ氏は、マリオ氏を伝って息子、クオモ氏に近づこうとしたが、マリオ氏に拒否されている。

この様子について、トランプ氏は自伝「How to Get Rich」の“Sometimes You Have to Hold a Grudge(時に恨みを抱くことも必要)”という章で、「長年何も望まず助けてやったのに、こちらが適切なことを一つ望んだ時には何もしてくれようとしない。ひどいヤツだ」などと記している。

当時クオモ氏の側近を務めた人物によると、トランプ氏はさらに執拗にクオモ氏に迫り、3億5000ドルの融資をしなければマリオ氏の法律事務所との顧問契約を打ち切るなどと脅したというが、最終的にクオモ氏は融資を退けている。

亀裂が入ったと思われた2人の関係は数年で修復したと見られる。2000年代になるとクオモ氏は地元ニューヨーク州に戻り、2002年の知事選に初めて立候補、2006年には州司法長官に当選、2010年には知事に初当選、という道を辿るが、その間、トランプ氏は大口献金者としてクオモ氏をサポート。2001年から2009年までの間、9回にわたって献金し、その合計は6万4000ドルにのぼった。さらに、トランプ氏の長女、イバンカ氏も2006年から2011年にかけ、6回にわたってクオモ氏に1万ドルを献金している。

このトランプ家からの献金が、2018年、クオモ氏が3期目を賭けた州知事選で、やり玉に挙げられることになる。クオモ氏は当時、「アメリカが偉大だったことなどない」などと反トランプ路線でキャンペーンを展開したが、民主党予備選挙の対立候補だった女優、シンシア・ニクソン(Cynthia Nixon)氏が、トランプ氏からクオモ氏への多額の献金の事実をつつかれ、返金すべきだとの声が広がった。結果的にクオモ氏は、返金しない姿勢を貫いた。

トランプ自身も知事選出馬を検討

2009年を最後にトランプ氏はクオモ氏への献金を行っていないが、その後、大統領選への布石として2014年のニューヨーク州知事選に共和党から立候補する可能性を模索していたことを、複数のメディアが報じている。最終的に共和党の支持が得られず断念したが、予備選挙を突破すればクオモ氏の対抗馬として火花を散らす可能性もあった。ところが、トランプ氏は個人的にはクオモ氏を気に入っていたようで、当時トランプ氏の顧問を務めたマイケル・カプート(Michael Caputo)氏は「トランプ氏がクオモ氏を友人だと思っていたのは明らか」「真の親しみを感じていたようだ」と話している。

結局は似た者同士?

2016年の大統領選以降、トランプ氏にはセクハラや税金逃れ、さらにはロシア疑惑やウクライナ疑惑といった政界を揺るがすものまで様々な疑惑がつきまとい、クオモ氏もこれを表立って批判してきた一人だった。しかしクオモ氏のセクハラが認定され、パワハラや隠ぺい行為などの疑惑が取り沙汰されている今、結局のところ、2人は似た者同士という論調も出ている。

今年2月にクオモ氏からパワハラを受けたと告発したニューヨーク州下院議員のロン・キム(Ron Kim)氏は、「ドナルド・トランプとアンドリュー・クオモ、どちらも権力を振りかざし、自分は法よりも上の存在だと信じ、自分の行いに責任を取らない男の典型だ」と述べている。

[参考文献]

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