大麻の合法化が進む米国で、常習者が激しい腹痛を訴え、緊急治療室に駆け込むケースが増加している。CNNが伝えた。
これらの患者は、数時間にわたって嘔吐を繰り返すという。10代の若者も多く、特にマリファナが合法化された州で多発している。
2012年に娯楽用大麻が合法化されたコロラド州では、2013年から2018年の間、嘔吐の症例が80万件あり、合法化以来29%増加したという。このうちの3割以上が25歳以下の若者だった。また2020年の研究では、周期的な嘔吐で入院した患者の約5人に1人が、大麻を使用していたことが判明している。
症状はカンナビノイド悪阻症候群(CHS)と呼ばれるもので、2004年にオーストラリアの研究者らによって初めて発表された。研究者らは、腹痛と嘔吐を繰り返した19人のマリファナ常習者を調査。このうちの9人は、大麻使用を止めると症状が消えたが、再開するとふたたび現れはじめたという。奇妙なことに、19人の半数以上は、自己治療で過度に熱いお風呂またはシャワーを浴びていた。
コロラド州の研究を報告したコロラド州立大学アンシュッツメディカルキャンパスの小児科医、サム・ワン氏によると、患者が症状を改善するために熱いシャワーやお風呂を必要とするのは、一般的だという。
なぜシャワーが効くのか理由は判明していない。ある仮説では、マリファナの成分で、向精神精神作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)が、痛みのシステムに作用し、CHSを起こすと考えられている。この場合、熱いシャワーの刺激によって、痛みの信号からそらす別の感覚信号が生成し、結果として症状が和らぐ可能性があるという。
ただTHCは、痛みの緩和や、がん患者の化学療法に関連した嘔吐の症状緩和に使用されてもいる。THCが痛みを和らげる一方で、その原因にもなるという点について、ワン氏は、含有量の可能性を指摘。CNNに対して、大麻製品に含まれるTHCの量が大幅に増えており、「90年代は平均4%から5%だったが、今コロラドではどこでも15%から20%になっている」と話している。
CHSは、すべての常習者にだけみられるわけではないが、この点についても、頻度や期間、特定の製品との関連など、理由は「まったく判明していない」という。
病院では緊急治療として、吐き気どめ薬を投与し、脱水症の対策ために点滴を行う。ただし、他の原因を排除するため、患者は血液検査、尿検査、高価なCTスキャン、胃腸内視鏡検査、胃排出機能検査など、数多くの検査をしなければならないという。
吐き気が止まらず、ERに繰り返してかかる子供もいるといい、ワン氏は、治療が遅れると「電解質異常、ショックや多臓器不全」といった重大な問題を引き起こす可能性があり、注意が必要だと語っている。