マイケル・ウォルフ氏によると、ジェフリー・エプスタイン元被告は、ビル・クリントン元大統領やトランプ前大統領に関する秘密情報を使って、検察と司法取引できると考えていたという。デイリーメールが、同氏の新刊本の内容を元に伝えた。
エプスタイン氏は2019年7月に、少女らを性的人身取引した罪で逮捕、起訴されたが、この翌月、ニューヨークの拘置所内で意識不明の状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。死亡から約1週間後、ニューヨーク市検視局は、首吊りによる自殺と断定した。
なお、死因を巡っては、死亡時刻に、担当の看守2名が居眠りをしたり、ネットサーフィンをしたりして業務を怠っていたほか、監視ビデオが「誤って」削除されるなど、不可解な状況が多く、他殺の可能性を指摘する声が絶えない。
トランプ政権の内情を描いた「炎と怒り」などの著者として知られるマイケル・ウォルフの新著「Too Famous: The Rich, the Powerful, the Wishful, the Notorious, the Damned」は10月19日の販売を予定している。
ウォルフ氏によると、エプスタイン氏は、逮捕の裏側に2つの狙いがあると考えていた。
一つは、トランプ政権下の司法省が、エプスタイン氏に圧力をかけて、クリントン元大統領の秘密を明らかにするために逮捕を命じたというシナリオ。
ウォルフ氏は「クリントンに執着していたトランプ氏は、エプスタイン氏がクリントン氏について知っていることにも執着していた」と記している。
なお、クリントン氏は、エプスタイン氏のプライベートジェットに複数回搭乗していた。クリントン氏もこれを認めており、報道官を通じて、2002年から2003年、クリントン財団の仕事に関連して4回利用したと説明している。
エプスタイン氏の被害女性の少なくとも1人は、クリントン氏が、性的虐待が行われていたとされるヴァージン諸島のプライベート島に出入りしていた証言している。ただし、クリントン側は、これを否定している。
この一方で、エプスタイン氏は、トランプ氏のビジネス取引を捜査していたニューヨーク南部地区検事局が、トランプ氏に不利な情報を得るために、自分を逮捕して寝返らせようとした可能性があるとも考えていたという。
エプスタイン氏は、すべてがうまくいかなくなったのは、フロリダ州パームビーチの物件を巡って、トランプ氏と揉めた頃からで、2006年のフロリダでの逮捕も、トランプ氏が警察をたきつけ、捜査に関与した可能性があると考えていたという。
2004年、同氏は破産オークションで売りに出されていたオーシャンフロントにある物件を気に入り、購入を計画したが、トランプ氏がこれを上回る金額を提示して取得した。一部では、トランプ氏が購入の意向を示す前、エプスタイン氏は改築に関する助言を得るために、トランプ氏と共に見学に訪れたこともあると伝えられている。トランプ氏は、この物件に住むことなく、2008年に取得金額を2倍以上上回る金額で売却している。
10年以上続いた2人の関係は、これをきっかけに悪化したとみられている。
ワシントンポスト紙によると、オークションから2週間と経たず、パームビーチの警察に、若い女性がエプスタイン氏の家に出入りしているとのタレコミがあったという。
エプスタイン氏は未成年の少女らにマッサージや性行為をさせたとして、フロリダ州で2007年に起訴された。翌年、連邦検察と司法取引を行い、2件の買春勧誘罪を認め、13カ月間服役した。ただし、服役中は、週6日12時間、刑務所を出てプライベートオフィスで仕事を許可されていた。
ウォルフ氏はまた、エプスタイン氏が死亡する数カ月前、ニューヨークにある同氏の自宅を訪れた際、スティーブ・バノン氏からエプスタイン氏に電話があったと明かしている。バノン氏は、トランプ氏の秘密を知るエプスタイン氏に「選挙期間中、私が唯一恐れたのは君だった」と話し、エプスタインは「君も同じく恐れるべきだったよ」と返答したという。
バノン氏は、2016年大統領選挙でトランプ氏の勝利を支え、2017年8月まで大統領首席戦略官を務めた。
このほか、本には、バノン氏が、2019年の初頭にCBSの看板番組「60ミニッツ」のインタビューの準備のため、エプスタイン家を訪れてコーチングをしたエピソードも記されていると報じられている。
結局、CBSのインタビューは実現せず、エプスタイン氏は同年7月、ニューヨーク南部地区連邦検事局によって拘束、起訴された。
なお、バノン氏はウォルフ氏のこの描写を否定しており、インタビューは長時間ドキュメンタリーのために収録したものだと説明している。