ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は18日、地下鉄は「安全だと思わない」と考えを述べ、市民の安全性の確保に努めると約束した。
15日にタイムズスクエア駅で、女性がプラットホームから突き飛ばされ、死亡する事件があったが、アダムス氏は、その後の会見で「地下鉄が怖いと思うのは”感覚”で、安全だ」と主張。非難を浴びていた。
主張を一転させた背景について、初登庁の日に市庁舎まで通勤した際、地下鉄で遭遇した光景に言及。「至るところでホームレスを見た上に、車内で叫んでいる者もいた」と述べ、「無秩序さ」を感じたと語った。
▼アダムス氏が1日に乗り合わせた電車の様子。座席で寝ている人や、奇声をあげる男性の姿がSNSに投稿されている。
公共交通機関での犯罪増加
ニューヨーク市警察は16日、ミシェル・アリッサ・ゴ(Michelle Alyssa Go)さん(40)さんを突き飛ばしたホームレスの男、サイモン・マーシャル(61)被告を、第2級殺人罪で起訴した。
マーシャル被告は、強盗未遂の罪で州の刑務所に2年間服役し、2021年8月に釈放されたばかりだった。家族によると、マーシャル被告は統合失調症を患っており、精神病院の入退院を繰り返していた。
なお、最新の犯罪統計では、今年16日までの市内の公共交通機関における犯罪件数は96件で、昨年同時期(58件)に比べると65.5%増加している。
18日、タイムズスクエア駅で開かれたゴさんの追悼式に参加したアダムス氏は、「困難を抱える人に、メンタルヘルスの専門家と警察官を派遣し、即座にサービスを提供する」と早急な対応を実施する考えを述べた。
追悼式に参加していたブルックリン在住のアジア人女性は、当社の取材に、自身もホームレスから攻撃を受けた経験があると明かした。アジア人差別やメンタルヘルス問題など、「これほど危険なニューヨークは、今までに見たことがない」と憤りを語った。さらに、今回の事件は「貧困や人種差別、不公平など、様々な問題が複雑に絡み合っている」と述べ、地域指導者による「真の改革が必要だ」と話した。
セラピストとして働く女性は、「メンタルヘルスの分野の財政援助は、しばしば見落とされ、リソースが不足している」と話し、マーシャル被告には、必要な支援が与えられていなかったのではないかと述べた。「ホームレスに対する誤解も非常に多い。恐怖心を抱かれているが、実際には異なる」と述べ、さらなる啓蒙活動が必要だと話した。