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米司法省 薬物投与施設容認の可能性

薬物の過剰摂取防止を目的とした薬物投与施設の可否について、米司法省が前向きに検討する姿勢を示した。AP通信が伝えた。トランプ前政権は同施設の開設に反対していたが、バイデン政権下で方針転換した形。

薬物投与施設(safe injection sites)は、ヘロインなどの麻薬を専門スタッフの監督下のもと安全に投与する場を提供することで過剰摂取の危険を予防するというもの。以前フィラデルフィアで開設計画が持ち上がったが、当時のトランプ政権はこれに強く反対し、施設の開設を計画した団体を提訴。昨年1月、ペンシルベニア州の連邦控訴裁判所が政権側の主張を支持する判決を下した。

控訴裁判所は判断の根拠として、違法薬物を使用する場所の運営を禁じる1980年代の薬物関連法に反するとした。連邦最高裁は昨年10月に、この件を審理しないことを決定している。

メリック・ガーランド司法長官はこれまで同施設に関する見解を示さなかったが、今回初めて立場を明確にした。AP通信の取材に対し、司法省は声明で「ハーム・リダクションや公衆衛生に対する全体的なアプローチの一環として、監視体制の整った薬物投与施設を再評価している」と説明。「投与施設における適切な危険防止策について、州や地方政府と話し合いをしている」と明かした。

薬物投与施設をめぐっては、昨年11月にニューヨーク市が全米で初めて、「過剰摂取防止センター」(Overdose Prevention Centers)と呼ばれる公式の投与施設を市内2か所に開設した。同センターでは、薬物を使用できるスペースのほか、清潔な注射針などの道具、オピオイド拮抗薬、依存症を治療するためのソーシャルサービスを提供。利用者の薬物投与の状況をスタッフが監視し、過剰摂取が起きた場合直ちに対応する。

施設を運営するOnPointNYCによると、開設後、これまでに640人が利用し、過剰摂取を防いだ例は、125件に上っている。利用者の多くは、リピーターだという。

なお、施設の開設を進めたデブラシオ前ニューヨーク市長(民主党)は、センターを医療関連施設と位置付けており、フィラデルフィアの判決の根拠とされた連邦法については、「薬物の違法取引を取り締まるもので、医療施設ではない」との見解を示している。

一方、ニューヨーク選出のニコール・マリオタキス連邦下院議員(共和党)は、フィラデルフィアの控訴裁の判例を踏まえ、ガーランド司法長官はニューヨークの過剰摂取防止センターを閉鎖するべきと主張している。また今回の司法省の声明にも難色を示し「危険薬物の流通の阻止や、密売人の取り締まり、中毒患者の長期治療に取り組むことなく、民主党指導部は違法薬物の使用を助長している」と声明を出している。

米疾病対策センター(CDC)の最新のデータによると、2020年5月から2021年4月までの1年間で、薬物の過剰摂取による死者数は推計10万人を超えている。支持者らは、専門の施設を設けることで過剰摂取による死者数を減らすことができると主張している。

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