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米国生まれの中国金メダリストに2重国籍疑惑【北京冬季五輪】

北京冬季五輪の女子フリースタイルスキーで金メダルを獲得した、中国代表のアイリーン・グー(Eileen Gu、谷愛凌)選手(18)に、2重国籍疑惑が浮上している。

8日に行われた記者会見では、米国の報道陣から、国籍に関する質問が相次いだが、グー氏は直積的な回答を避けた。なお、中国では2重国籍を認めていない。

グー氏は、中国人の母親とアメリカ人の父親を持ち、カリフォルニア州サンフランシスコで生まれ育った。3年前に中国人に帰化。現在18歳で、今秋からスタンフォード大学に入学する予定だという。

会見で、まだ米国市民かと尋ねられると、米国チームの支援に常に感謝の気持ちを示してきたと述べた上で、「中国チームも同様だ。私をいつつも支援してくれている」と説明。続けて「スポーツは、われわれを団結させるものであり、国籍に関係づけられるものである必要はない。人々を分断するために使われるべきものでもない」とはぐらかした。

他の記者から、国籍についてもう一度念を押されると、「毎年4分の1程度は中国で過ごしている」と説明し、中国語と英語が流暢で、文化的にも堪能だと強調。続けて、「アメリカ人であるのと同様、中国人だと感じている。アメリカにいる時はアメリカ人で、中国にいる時は中国人だ」と語った。さらに両国の支援に感謝を述べ、「自身の使命は、スポーツを団結の力とし、国家間のつながりを促進する形として使用することで、分断する力として利用することではない」との主張を繰り返した。

「マーケティング・マシーン」と非難

この会見に対し、USA TODAYのダン・ウォルケン(Dan Wolken)氏は、「中国のために金メダルを獲得した後、アイリーン・グーの人生はより複雑になる」と題した論説を投稿。グー氏は「自分が生まれ育った国ではなく、なぜ母親の母国のために、競技に参加したのかと問われるだろう」と国籍を巡る問題が、今後もつきまとうだろうと指摘した。

さらに「裏切り者や人種差別者などと侮辱されたり、中国にそのままいろと言われかねない」と指摘。(保守系メディアの)FOXニュースからは、この先何年も「文化戦争のネタ」にするだろうと述べた上で、「左派と右派のどちらにも、避難港を見つけることはできない」と、厳しい世論にさらされる可能性を示唆した。

会見は、彼女のアイデンティティではなく「市民権」に関する質問だったと指摘。スポーツを通じて、両国の架け橋になりたいと語っているが、米中間の政治問題を、競技のように「簡単に滑走するのは、不可能だ」と評した。

なお米国は、北京大会で、中国の人権侵害に抗議するため「外交的ボイコット」を表明している。

さらに、帰化の選択には、中国でのビジネスチャンスが背景にあるとも指摘。金メダルを獲得したとしても、米国での名声は1-2週間程度だが、中国でのオリンピックの注目度は高く、既に中国銀行やルイ・ヴィトンなどの企業広告に多数起用されていると述べ、「中国共産党の指示に従い、ウィンタースポーツへの情熱を掻き立てる”マーケティング・マシーン”」と揶揄した。

会見では、性的暴行を告白後、最近になって疑惑を否定した女子テニスの彭帥選手についても質問が及んだ。グー氏は回答を避け、「幸せかつ健康で、彼女がこの場に出てこれたことを嬉しく思う」と話した。ウォルケン氏は、この発言は「プロパガンダ」でしかないと批判。今後「偽善を避けるのは不可能」だと述べた。

ワシントンポスト紙は、米国生まれで中国人に帰化したフィギアスケート中国代表のジュ・イー(Zhu Yi、朱易)選手(19)にも言及。イー氏とグー氏に対する中国国内の対照的な反応を挙げ、「ファンが支持するのは、勝利した時だけ」と皮肉を述べた。

イー氏は、団体女子シングル戦に出場したが、複数回、転倒。中国チームは、5位の結果に終わった。中国のSNSウェイボには、「ジュ・イーが転んだ」「恥を知れ」「不名誉」など厳しい言葉が、飛び交ったという。
同紙によると、このほか、イー氏は中国語が堪能でないことから「愛国主義を語る前に、中国語を学んで」といった声や、著名な科学者の父親に触れ、コネの可能性を指摘する意見も投稿されているという。

中国をルーツに持つフィギュアスケートの米国代表選手、ネイサン・チェン氏やヴィンセント・ジョウ氏も、以前は中国でも賞賛されていたという。しかし、両国間の緊張の高まりに伴い、国粋主義者を中心に、攻撃の対象になっているという。

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