ハリウッド俳優でカリフォルニア州知事も務めたアーノルド・シュワルツェネッガー氏が、ロシア国民に向け、ロシア政府のプロパガンダを信じないようにと動画で訴えかけた。これに対しロシアのメディアが猛烈に反論しているという。デイリービーストが伝えた。
動画はシュワルツェネッガー氏が、ロシアの一般市民がウクライナ侵攻について真実を知らされていないと指摘し、プーチン大統領が戦争でウクライナを苦しめている現実に目を向けるよう訴えかけたもの。17日、ツイッターのほか、テレグラムなどにも投稿された。ロシアの政府系メディアは当初、沈黙を決め込んでいたが、動画の再生回数が数百万回規模にのぼったことを受け、公に批判をし始めた。
その一人が、ロシアのテレビ司会者、ワジム・ギギン氏。ジャーナリストのウラジーミル・ソロヴィエヴォン氏がホストを務める国営テレビ番組「Sunday Evening With Vladimir Soloviev」に出演し、動画を「アメリカの帝国主義と植民地主義の象徴だ」と批判。「アンクルサムの風刺画ではなく、ハリウッド版のシュワルツだ」などとコメントした。
シュワルツェネッガー氏は動画で、憧れのロシア人重量挙げ選手、ユーリ・ウラソフ氏との交流や、ロシア訪問時の思い出を話すなど、ロシア愛を強調。その上で「ウクライナの戦争について真実を話させてほしい」と切り出した。ギギン氏はこの発言を取り上げ、「カリフォルニアにいる彼が、この場にいる私たちに語りかける。真実を!?これが彼らのやり方だ」と憤った。
シュワルツェネッガー氏はウラソフ氏からもらったカップを今でも大切に使っていると明かしているが、ギギン氏はこの点にも言及。「握手したり物をあげたりしたからと言って、ウラソフが頭の中身を伝達できるわけじゃない」と主張。ウラソフ氏はソビエト連邦解体に反対していたが、ギギン氏は、シュワルツェネッガーなどにはそんなウラソフ氏を理解できないと言い放った。これに司会も便乗し「シュワルツェネッガーは米軍支援のため2度もイラクを訪れている。だがイラク市民になぜ街が破壊されているのか説明することはない」と皮肉った。
ロシアの国営メディアだけでなく、著名人らも非難に加わった。
ロシアのパワーリフティング選手で、シリアの独裁者、アサド大統領に心酔しているというマリヤナ・ナウモヴァ氏もその一人。21日、タブロイド紙に掲載されたところによると、ナウモヴァ氏は、シュワルツェネッガー氏を「現実逃避で、空想の中に生きている」と非難した。
さらに、ウクライナ政府はナチスだと根拠のない訴えを展開。「ゼレンスキー大統領がユダヤ教徒だなんて話は、彼の助けにはならない。ナチズムに国籍なはいし、“ドイツ”という言葉に由来するものでもない。ロシア嫌悪は反ユダヤ教と同じくらい悪い思想だ」と述べた。
シュワルツェネッガー氏の代表作「ターミネーター」を引き合いに出し、「ターミネーター2で、主人公が人類に死をもたらすスカイネットの構築を阻止したシーンを覚えてる?ロシアの特別軍事作戦はウクライナ市民を破滅させる目的じゃない。長年ウクライナを支配し制御不能なモンスターとなったネオナチのスカイネットを狙っているの。それは私たちだけでなく、近隣の全ての国を危険にさらす。ターミネーター、スカイネットの側についてはだめ」と呼びかけた。
ドンバス戦争で「たくさん殺した」と吹聴し、ウクライナ政府からテロ活動への参加で指名手配されているというロシアの作家、ザハル・プリレーピン氏は、自身のテレグラムのチャンネルで「シュワルツェネッガーは映画で300万人ものロシア人を殺しておきながら、ロシア人を愛しているとか、ウクライナ侵攻は誤りだなどとと言っている。(中略)このオーストリア生まれの、元ナチス親衛隊でレニングラード近くで負傷した父を持つ男は、善良な警察を気取っているのだ」と非難。「アメリカはロシア人の抹殺を企み、ウクライナに大量の武器を提供している」と述べ、「アーニー(シュワルツェネッガー)、お前はプレデターで、宿敵だ」と呼びかけたという。