人気ファッションブランド、ケイトスペードの香水のマーケティングキャンペーンで米化粧品小売チェーン「アルタビューティー」が使ったキャッチコピーがあまりにも無神経だと非難が殺到している。ニューヨーク・ポスト紙が伝えた。
事の発端は1日、アルタビューティーが顧客向けに配信したメール。ケイトスペードの香水を前出しにした内容だったが、そのキャッチコピー「Come hang with Kate Spade」のフレーズに対し、ネットで非難の声が相次いだ。
“Hang”はこの場合、”with”を伴って「一緒に遊ぶ」「出かける」といった意味合いだが、単体では「首を吊る」という意味で使用されることもある。ケイトスペードのデザイナー、ケイト・スペードさんは2018年6月、首を吊って自殺し、55歳で亡くなっている。
もちろん意図的にスペードさんの自殺をほのめかしたわけではなかったようだが、同紙によると、アルタビューティーの広報は声明で「ケイトスペード・ニューヨーク・フラグランスをフィーチャーしたメールに無神経なタイトルがつけられていたことを深くお詫びします」と謝罪。「メンタルヘルスはこの国では深刻で重要な問題で、我々も決して軽んじてはいません。スペード氏の遺族、ケイトスペード・ニューヨークのパートナーや顧客の皆様に謝罪します。我々の業務改善に向け、ご理解を頂ければと存じます」とコメントした。
SNSではファンによる怒りのコメントが殺到している。あるユーザーは「クリックベイト(釣り広告)の使い方が最低」と、意図的な使用だとして非難。別のユーザーは「今日のメール、信じられない。悪趣味なジョークか何か?無神経でまったく空気が読めてない。アルタビューティーのマーケティングチームにケイトスペードがどう亡くなったか、覚えている人がいないのは明白。最低」とコメントした。
このほかにも「アルタビューティーはメンタルヘルスのコミュニティやケイト・スペード、彼女の遺族のことをまったく気にかけていない。気分が悪い」といった声や、5月が皮肉にもメンタルヘルス啓発月間であることから、#MentalHealthAwarenessをつけて「ケイト・スペードは素晴らしく、アイコン的な存在だった。あなた(アルタビューティー)の注意力の欠如は良く言えば哀れ、悪く言えば怠慢で有害。精進して」とたしなめるコメントが投稿された。
一方、「アルタビューティーとケイトスペードのメールをシェアすることは、正直アルタがメールを送ったこと以上に悪いことだと思う…苦情があるならアルタにメールするべきだった」と、炎上したことで不必要に拡散されたことに対する懸念の声も寄せられている。
ケイトスペードさんの死去
ケイト・スペードさんは2018年6月、自宅で死亡しているのが発見された。部屋からは、娘のフランシスさんに宛てた遺書が見つかった。
ケイトさんが夫のアンディ・スペードさんとケイトスペードブランドを立ち上げたのは1993年。自ら資金を投じてプレッピーでカラフルなハンドバッグを作り、数年は2人で見本市などに参加し地道に販売していたが、のちにバーニーズやサックスフィフスアベニューといった高級百貨店と取り引きをするまでに成長。世界的なブランドへと育て上げた。
2006年、2人は保有していたケイトスペードの株式のすべてをニーマンマーカス・グループに売却するが、その頃には同ブランドはファッションアイコンとして認められ、ハンドバッグ以外にもアクセサリーや衣料品、家庭用品にも商品展開を広げていた。
2016年に、娘の名前を冠した新ブランド「フランシス・ヴァレンタイン」(Frances Valentine)を立ち上げ、デザイナーとして再び現場に復帰していた。
ケイトさんが死亡した際、別居中だった夫のアンディ氏は声明で「ケイトは数年間、うつ病と不安障害に苦しんでいた」と述べ、「病気を克服するために医者に助けを求め、懸命に治療を行なっていた」と、治療中であったことを明かしている。