全米最大のオフィスセクターを抱えるマンハッタンでは、週5日間フルで出勤するオフィスワーカーの割合が10%を下回る一方、完全リモートで仕事をする社員が現在も3割近くに上ることが、新たな調査でわかった。
調査は非営利団体「Partnership for New York City」が4月21日から5月4日にかけて、主要な会社160社を対象に実施した。
標準的な平日のオフィスワーカーの出社率は38%で、6割以上がリモートで仕事をしていることがわかった。
週5日出社しているオフィスワーカーは8%で、ハイブリッドでは、週4日出社が11%、週3日出社17%、週2日出社21%、週1日出社14%となった。完全リモートは28%だった。なお昨年10月の段階では完全リモートは54%だった。
今秋の見通しでは、標準的な平日の出社率は49%へと改善するものの、週5日出社は9%と、わずかな上昇にとどまった。ハイブリッドでは、週3日出社が17%から33%に上昇し、主流となることが予想される。完全リモートは約半分の14%まで低下する見通し。
ちなみにパンデミック以前は、雇用主の84%が週5日出社モデルを採用し、ハイブリッドは6%、フルリモート企業は1%にすぎなかった。パンデミック後は、78%がハイブリッド、週5日は10%へと逆転した。
ただし、雇用主の91%は従業員にオフィスに戻ることを推奨しており、そのために、少なくとも6割以上の雇用主が、社員に対して、社会活動の支援、無料の食事またはディスカウント、交通費補助、育児支援などのインセンティブを提供していることがわかった。
市長は危機感
先月公表された市の予算案では、市内のオフィススペースの空室率は、2026年まで少なくとも20%が続くと予測が示された。パンデミック以前は10%で、15%を持続的に超えるのは1990年初頭の不況以来だという。
エリック・アダムス市長は、以前から、オフィスワーカーの復帰率の停滞は、レストランなどのサービス産業の雇用削減といったドミノ効果を生み、市のエコシステムを損なうと主張している。ニューヨークポスト紙のインタビューでは「コロナ後は、異なる世界に対処しなければならないことはわきまえている」としつつ、空室率の高止まりは「真の懸念」だと述べ、「ビジネスリーダーや経済学者らと協議をしなければならない、コロナ後につまづくわけにはいかない」と警戒感を示した。
さらに「みんなをオフィスに戻さなければならない」と話し、「あの会計士はレストランに行かなければならない、ビジネス客を連れてこなければならない」と語った。
空室率は、税収の低下にもつながりかねない。
政府監視団体「Citizens Budget Commission」のリサーチャー、ショーン・チャンピオン氏は、同紙の取材に、「空室の増加は、ビルの価値の低下」を招くと説明。固定資産税の税収の低下や伸び率の鈍化につながると指摘している。