映画『トップガン マーヴェリック』に登場するミステリアスな試験用極超音速機「ダークスター」(The Darkstar)には、モデルとなる航空機があった。
約35年ぶりに公開された待望の続編の前半では、トム・クルーズ扮するマーヴェリックが、ダークスターを無許可でテスト運転するスリリングなシーンが描かれる。ダークスターはマッハ10(!)を突破し、前人未踏の新記録を更新する。
Deadlineによると、予告編が公開された際、ダークスターの正体は「史上最速の飛行機」の異名をとる戦略偵察機「SR-71 ブラックバード」という憶測が流れた。ブラックバードの最高速度はマッハ3で、ロシア製のMiG機が発射するミサイルの速度よりも早い。中には、現在開発中の新型機「SR-72」ではないかと噂する声も上がっていた。
ロッキード・マーティン社は2013年、”ブラックバードの息子”としてSR-72の開発計画を発表。開発費用は10億ドルで、2030年の運用を目指していた。最高速度はマッハ6で、2017年にエンジンテストが行われたほか、2023年までに初回のデモ飛行を行う予定とも報じられているが、詳細は不明で、ベールに包まれたままとなっている。
ロッキードが提携
ロッキードのジェームズ・タイクレットCEOは今月、LinkedInへの投稿で、開発部門「スカンクワークス」(Skunk works)が、トップガンの製作陣とパートナーシップを締結し、「最先端かつ未来のテクノロジーを大画面にもたらした」と発表。「極超音速飛行における重要な作業」に関わったことを明かし、サンディエゴで開催されたプレミアに出席した際の写真を添えた。なおスカンクワークスは、SR-72を含む最新機などの開発を手がけている。
ロッキードの欧州・中東・アフリカ地域の広報責任者ジョン・ニールソン氏も先月末、自身のツイッターを更新し、「5月27日に劇場公開される『トップガン マーヴェリック』で、SR-71の後継機であるSR-72が、どのようなものであるかチラ見できるという噂がある」と述べ、「宣材資料のスチール写真が、その考えを物語っているようだ。待ちきれない」と投稿。SR-72が使用された可能性を示唆していた。
プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー氏も軍事系ブログサイトSandboxxニュースに対し、監督のジョセフ・コジンスキー氏が「スカンクワークスと仕事を行っており、ロッキードが、そこにある飛行機をデザインしている」と明かした。
自ら「航空マニア」だと名乗るコジンスキー監督も先週、ロッキードとの協業を認めた。ComicBookMovie.comの取材で「できるだけリアルに感じさせたかった」と述べ、スカンクワークスの協力のもと、航空機を製造したと語っている。「機能や見た目、スイッチ、スティックなどのディテールは実際、本物の試験用航空機から取り出したものだ」と述べた。
撮影のために、ダークスターの実物大の大型模型が製作されたという。「リアルに見えるのは、スカンクワークスのエンジニアが設計を手伝ってくれたからだ。実際の航空機を手がけた人々だ」と語った。
作品中におけるダークスターの役割について、コジンスキー監督は「冒頭の数分間は、トップガンの映画だと感じてもらいたかったが、いったんトム・クルーズがジェット機に乗ると、われわれが全く新たなストーリーを伝えようとしていることを知らせたかった。シーケンスは、そのトーンを作るために役立った」と語っている。
模型は、中国政府が着目するほど精巧に作られていたという。ブラッカイマー氏は、撮影中に海軍から、中国の衛星が航空機を撮影するため、別のルートに向かったことを知らされたというエピソードを明かし、「彼らはそれが本物だと思った。これは、それほどリアルに見える」と語った。
ダークスターは撮影中、実際に飛行したのだろうか? Deadlineは、予算や安全保障の観点からも、その可能性はないだろうとしている。