ロシアによるウクライナ侵攻から4ヶ月が過ぎるなか、欧米企業の脱ロシア化に一層拍車が掛かっている。米国のマクドナルドは5月、ロシアからの完全撤退を表明した。同社は3月、ロシア国内で展開する850あまりの店舗を一斉に閉鎖していた。マクドナルドと同様、スターバックスやナイキなど米国を代表する企業が続々と完全撤退を発表している。
モスクワの市長は4月、欧米を中心にロシアへの経済制裁が強化される中で、市内の外国企業で働く20万人あまりが失業する恐れがあるとの見解を示すなど、ロシア国内では制裁による国内経済への影響を危惧する声も少なくない。
しかし、欧米主導による対ロ制裁の有効性については疑念の声も増えている。中国税関総署は6月、5月のロシアからの原油輸入量が前年同月比で55%、天然ガスが54%それぞれ増加したと明らかにした。米国を中心に欧米や日本はロシアに対して制裁を強化しているが、中国はロシアへの非難や制裁を避け、経済的に接近する姿勢を示してきた。
今回それが数字として明らかになったわけだが、最近も習国家主席はロシア主催の国際経済フォーラムの場で、欧米による一方的な対ロ制裁は排除する必要があるとの認識を強調し、“対欧米”、“中露共闘”の姿勢を鮮明にした。
また、プーチン大統領自身もオンライン形式で行われた新興5カ国BRICS首脳会議前のビデオ演説で、ロシアは経済や貿易を中国やインド、南アフリカやブラジルなど信頼できるパートナー国に振り分けていく意思を表明した。実際、今後経済力で日本を抜くと言われるインドは、ロシアと武器供与などで伝統的な友好関係にあり、両国間の石油貿易は侵攻後むしろ活発化している。
5月に東京で日米豪印によるクアッド首脳会合が開催されたが、共同声明でロシアを名指しで非難することは回避された。日米はロシア非難の文言を盛り込むつもりだったが、その背景にはクアッドの一体性を内外に示すためにも、インドの立場を考慮したことがある。
侵攻開始当初、ロシア通貨ルーブルは下落するとの見方が強かった。しかし、いざ蓋を開ければルーブルは5月26日に最高値を記録した。制裁が効いているかどうかの判断は人によって感じ方が違うだろうが、少なくとも言えることは、欧米主導の対ロ制裁の抜け道は存在し、その行方は中国がどう行動するかによって大きく変わるということだ。