日本時間8日、参院選候補の応援演説中に銃撃を受け、死亡した安倍晋三元首相。事件を利用した“偽ツイート”が、ネットで拡散している。
問題のツイートには、安倍氏が亡くなる前日の7日午後1時9分投稿とタイムスタンプがあり、「I have information that will lead to the arrest of Hillary Clinton.(ヒラリー・クリントンを逮捕につながる情報を持っている)」と書かれている。ツイッターの投稿そのものではなく、スクリーンショットのイメージが拡散されている。
AP通信は、このスクリーンショットをもとにファクトチェックを行い、ツイートは偽物と断定。投稿者のユーザー名は@ShinzoAbeとあり、公式アカウントであることを示す青のチェックマークがついているが、実際の安倍氏の公式アカウントのユーザー名は@AbeShinzoで、これとは違うとした。また、プロフィール写真も、公式アカウントは腕組みをする安倍氏の上半身が写ったものだが、スクリーンショットのものはこれではないと指摘。さらに、投稿には英語だけでなく日本語の原文も書かれているが、日本語では「繰り返しになりますがですね、私」となっていて、クリントン氏には一切触れていないとも説明した。
実際の安倍氏の公式ツイッターアカウントには、亡くなる前日の7日まで連日参院選関連の投稿があったが、クリントン氏に言及したものはなかった。なお、フェイクツイートの元になったのは、そのプロフィール写真とアカウント名から、安倍氏の公式アカウントではなく「安倍晋三 名言集」というボットアカウントと見られるが、こちらには本来公式マークはついていない。
米国では、クリントン夫妻が政敵を暗殺していると虚偽の主張をする陰謀論(「Clinton Body Count」と呼ばれる)が90年代から出回っており、これまでにも著名人やセレブの死に際して、同様の投稿やミームが拡散され、問題視されている。
2019年にジェフリー・エプスタイン元被告が獄中で自殺をはかった際、当時大統領だったドナルド・トランプ氏は「ジェフリー・エプスタインがビル・クリントンの情報を握っており、死亡した」と、クリントン氏の関与を示唆する投稿をシェアして批判にさらされた。
2年前に死去したルース・ベイダー・ギンズバーグ米最高裁判事も、死去後、ギンズバーグ判事の名を使った偽アカウントから同じメッセージが発信された。なお、ギンズバーグ判事は生前、ツイッターを使っていなかった。
安倍氏の偽ツイートについて、ネット上では単なるジョークと見るユーザーもいたが、本物と受け止めたユーザーもいた。いずれにしても唐突にクリントン氏に言及する投稿内容には混乱した様子で、「これ本物?彼のツイッターには見当たらなかった」「安倍晋三がこうツイートしたの?」などとコメントが飛び交った。
ちなみにヒラリー・クリントン元国務長官は8日、「安倍総理大臣は、民主主義の擁護者であり、いかなる経済、社会、国家も、女性を置きざりにするようでは、その潜在力をフルに発揮できないと固く信じる者でもあった」と投稿。「日本、そして世界にとって損失であり、彼の殺害にショックを受け、打ちひしがれている」と哀悼の意を表した。