ツイッター買収計画を一方的に破棄し、ツイッターから訴えられたテスラのイーロン・マスクCEO(51)。常に話題の絶えないマスク氏が、こちらも何かと話題のトランプ前大統領(76)の致命的な問題に言及した。
発端は、トランプ氏が9日、アラスカ州で行った支持者集会で、ツイッター買収計画を突如撤回したマスク氏を「ホラ吹き」呼ばわりしたこと。マスク氏が自分に投票したにも関わらず嘘をついたとも主張し、「彼はある時『共和党には投票していない』と言った。私は『そうなのか、彼は私に投票したと言ったのにな』と思った。奴は大嘘つきだ」などと聴衆に語った。
この演説の模様を収めた動画が右派メディア「ブライトバート・ニュース」のツイッターに投稿されると、マスク氏はこれにリプライする形で反論。「この男は嫌いじゃないが、トランプはそろそろ帽子を脱いで夕日の向こうにおさらばする時だ」とコメントした。続けて「民主党も攻撃をやめるべきだ。大統領復帰をトランプが生き残る唯一の方法としないためにも」と、トランプ氏の対抗勢力に対しても話題を煽らないよう呼びかけた。
これに対し、トランプ氏支持派のユーザーがトランプ氏大統領在任中の功績を並べ「これのどこが問題だ」と疑問を呈すると、マスク氏は「ドラマを煽りすぎだ」と返信。「陶磁器店に雄牛(間違いや破滅的行動ばかりする注意に欠けた人の例え)を入れるような状況で本当に毎日過ごしたいのか!?それに、私は大統領就任時の最高年齢を法律で69歳までにすべきだと思う」と、大統領になるには高齢すぎると、暗に指摘した。
マスク氏はさらに、別のユーザーに返信する形で、「(大統領に再選した場合)トランプは任期を終える頃には82歳。これは何の最高責任者を務めるにも年寄りすぎる。米国(のトップ)にしても然りだ」と、ここでも年齢に言及。そのうえで、トランプ氏以外に共和党有力候補と目されるフロリダ州のロン・デサンティス知事(43)について、党の指名を勝ち取れば大統領になる、とし、「2024年、デサンティスがバイデンと対戦すれば、デサンティスの圧勝だろう。選挙活動すら必要ない」と強気な予想を展開した。
デサンティス知事は、トランプ氏の党内の対抗馬として期待されているが、本人は現段階で出馬の意向を示しておらず、世論調査でもトランプ氏が共和党の最有力候補とする声が大半との結果が出ている。
マスク氏 長老支配に警鐘
マスク氏がリーダーシップの高齢化の問題に言及するのは初めてではない。3月に行ったビジネスインサイダーのインタビューでは、「我々はすでに長老支配の深刻な問題に直面していると思う。指導者が非常に高齢な国がとても多い」と危機感を示した上で、「アメリカは、非常に時代遅れのリーダーシップだ。何世代も上の人物が一般の人々と繋がろうなどというのは、単純に不可能だ」と主張。民主主義が適切に機能するには、「一般の大多数の人と適度に関わりを持てる」指導者であるべきと述べ、年齢は人口全体の平均年齢との差が10~20歳以内であるのが理想的だとの考えを示した。
トランプ氏 年齢議論に牽制
一方のトランプ氏だが、マスク氏の投稿と日を同じくして、Truth Socialのアカウントで「80代でも、90代ですら、元気で頭の冴えた人も大勢いる」と投稿。「バイデンはその一人ではないが、彼の年齢自体はそれほど問題ではない」と述べつつ、「事実、人生は80歳から始まるのだ!」と豪語した。
この前日、民主党支持者の64%がバイデン氏の再選出馬を望まないとの世論調査の結果が示されたが、その理由として最も多かったのが「年齢」だった。トランプ氏の投稿はこれを意識したものだろう。
マスク氏が、トランプ氏の話題を煽ってしまっている感が否めないが、プラットフォームを跨いだ新旧インフルエンサーのバトルは、まだまだ続きそうだ。