昨年1月6日の米議会議事堂襲撃事件をめぐり、トランプ前大統領の責任を追及する下院委員会の調査が大詰めを迎える中、トランプ氏がSNS上で恨み節を連発した。
委員会はこの日、事件当日の関係者の証言やテキストメッセージをもとに、トランプ氏は、家族や側近から即時介入の求めがあったにも関わらず、これを聞き入れずに暴動がエスカレートすることを許したと指摘。暴動を「止められなかったのではなく、止めないことを自ら選んだ」とし、自らの副大統領や議員、警官らの命を危険にさらしたと非難した。
公聴会のテレビ中継が終わって間もなく、トランプ氏は自身が立ち上げたSNSサービス「Truth Social」に連投を開始。特別委員会(Selected Committee)を、「非特別委員会(Unselected Committee)」などと呼んで揶揄し、「特別ではない委員たちは今夜の『パフォーマンス』で大恥をさらした」と嘲った。
その後も幾度に渡る投稿で方々への攻撃を続け、宿敵民主党のナンシー・ペロシ下院議長については複数回言及。事件前、州兵1万人をワシントンDCに送ろうと提案したがペロシ氏が拒否したと主張し、「非特別委員会」はなぜこの問題に触れないのかと不満を述べた。
別の投稿でも「全部ナンシー・ペロシのせいだ。軍投入の提案を拒否したからだ!きっと、彼女は心ここにあらずだったんだ。夫を探していたのかもしれない」などと攻撃した。なお、州兵1万人もしくは軍の動員を提案したと主張するのはトランプ氏本人だけで、証拠も出ていない。
この日の公聴会で証言した元大統領副報道官のサラ・マシューズ氏にも非難の矛先が向けられた。トランプ氏は「まさかあのサラ・マシューズか?よく分からないが、(昨年の)1月20日、または1月6日より後に、私に体のいい言葉をかけてきたあの?」と投稿。マシューズ氏はトランプ氏の大統領退任日、「トランプ大統領、ペンス副大統領、ありがとう。あなたたちの国民への奉仕に感謝します。この素晴らしい国に仕えることができたのは私の人生で最高の栄誉です」とツイッターで感謝を述べていて、トランプ氏の発言にはこれを念頭に、社交辞令を皮肉ったと見られる。
マシューズ氏は21日の公聴会で、トランプ氏が議事堂襲撃当日、ペンス前副大統領は大統領選の結果承認を止める「勇気がなかった」、などとツイートしたのを見て、その日のうちに職を辞任したと証言。トランプ氏のツイートは「火に油を注ぎ、事を荒立てる行為だった」と見解を語った。
また公聴会では、上院共和党トップ、ミッチ・マコーネル院内総務が、民主党のチャック・シューマー上院院内総務や国防総省と協力して議事堂からの避難を促す様子や、下院の共和党トップ、ケビン・マッカーシー院内総務が、トランプ氏は暴動の責任を認めたと発言する映像も公開されたが、トランプ氏はこれらにも言及。「あのミッチ・マコーネルか?ケンタッキー州で大敗しそうだとホワイトハウスにきて私に支持を懇願し助けを求めた、あの?私がいなければ大敗を喫していたのに。忠誠心のない、だらしないやつだ!」と攻撃した。
続けてトランプ氏は「1. ヒラリー・クリントン、ステーシ―・エイブラムス、その他大勢も、選挙結果に異議を唱えた。それも私よりもずっと長い間だ。2. 私がテレビを見ているとどうやって知った?3.ケビン・マッカーシーには何も言っていない」と主張。マッカーシー氏についてはトランプ氏のフロリダ州の自宅、マール・ア・ラーゴを訪れ自分に挨拶してきた、と付け加えた。そして「非委員会は、堕落し偏見に満ちていて、嘘と間違いばかりだ!」と批判を展開した。
特別委員会で副委員長を務める共和党のリズ・チェイニー下院議員への攻撃も忘れず、「聖人面した負け犬」などと蔑み、「偉大な州、ワイオミングはそれを分かっている。選挙に異議を唱える証拠テープやインタビューを出してくればいいのに」とした。
以前の公聴会で、襲撃事件の最中、車内にいたトランプ氏がシークレットサービスの運転を妨害し、議事堂に向かわせようとしたなどと証言した、メドウズ元首席補佐官の側近カシディー・ハチンソン氏にも言及。「特別ではない委員たちはなぜ、(自分がシークレットサービスの)『首を絞めた』とか言う証言について、シークレットサービスに裏付けを取らない?なぜなら彼らは答えを知っていて、それを認めたくないからだ。吊るしあげだ!」と不満をぶちまけた。
元側近や陣営スタッフ、家族など身内からも否定発言が飛び出した選挙不正説についても、しっかりと強調。「選挙は欺かれ、盗まれた。私からだけでなく、国民からもだ。アメリカは地獄に堕ちるぞ。それで幸せか?」などと恨みがましいメッセージを投稿した。