マンハッタンの路上で10日、観光用の馬車を引いていた馬が倒れる出来事があった。
NBCニューヨークによると、馬はヘルズキッチンの9アベニュー&45ストリート付近で最初、膝をついた。馬車を引いていた男性は、鞭で叩き、起き上がるよう促したが、馬は頭を地面につけ、そのまま横向きに倒れた。目撃者からは「馬を叩くのをやめろ」など非難の声が飛んだという。
通報を受けたニューヨーク市警察が午後5時ごろ現場に到着した際、「馬は道路の中央に横たわり、苦しんでいた」。SNSに投稿された動画には、通行人が見守るなか、警官がホースで水をかけるなどして、馬の体を冷やす様子が撮影されている。
馬は1時間ほどして起き上がった。この際、周囲からは拍手が湧き起こったという。警察車両でマンハッタン内の馬小屋まで移動し、獣医の診断を受けた。
馬車の廃止を求める団体NYCLASSは、ツイッターを更新し「世界は見ている」と投稿。政治家に対し、これらの車馬を廃止し、電気自動車に置き換えるよう求めた。
動物愛護団体のPETAも「馬を大都市に置くべきではない、車や人間、天候などの危険にさらされている」と非難した。
馬車馬の従業員を代表する組合「トランスポート・ワーカーズ・ユニオン」の広報担当者は、「ライダー(倒れた馬の名前)は、馬原虫性脊髄脳炎と診断された」と発表。この神経疾患は、フクロネズミの糞に含まれる寄生虫によって発症し、薬で治療することが可能だと説明した。14歳のライダーは、仕事をはじめてから、4カ月目だったという。
ニューヨーク市では先月20日にも、馬が路上で倒れ、死亡する事故があった。市保健当局は死因について、疝痛(馬の腹痛)によるものと発表したが、CLASSは、馬の治療を放置した可能性があるほか、この日の気温が、馬車の営業が許可される制限温度(32℃)を超えていたとして、調査を求めている。
昨年9月には、路上を走行していた馬が車と接触し、負傷する事故もあった
営業停止を求める声
セントラルパークを走行する馬車は、観光客の間で人気のアトラクションだが、動物保護の観点から、営業停止を求める活動が長年続いている。
前ニューヨーク市長のデブラシオ氏は2013年、公約の中で馬車の廃止を掲げていたが、馬車業界や労働組合らの強い反対に合い、実現しなかった。
2019年には、極端な気温(32℃以上)の中で馬車の運行を禁止する法案が成立。同年、馬車の乗り場が、交通量の多いセントラルパーク南の道路から、公園内に変更する法律が施行された。