トランプ前大統領が12日に発表した声明で、自ら核に関する資料を持ち出したことを認めていると、話題になっている。
米連邦捜査局(FBI)は8日、トランプ氏が大統領退任時に米政府の機密文書を不正に持ち去った疑いがあるとして、フロリダ州パームビーチにある同氏の自宅兼ゴルフリゾート施設マールアラーゴの捜索に入った。
トランプ氏は、捜索は「不必要で不適切」と主張し、2024年大統領選への出馬を阻止するための民主党による攻撃などと非難。さらに捜査官がトランプ氏側の立ち会いを認めなかったとしつつ、FBIが「情報を仕込んだ」可能性を示唆するなど、陰謀論めいた主張を展開している。
11日に捜索対象の文書に核兵器に関する資料が含まれていたと報じられると、「核兵器の話は大嘘だ。ロシア疑惑や、2度の弾劾や、(ロシア疑惑を捜査した)モラー特別検察官が大嘘だったのと同じだ」と否定した。
ただし、この翌日、自身のSNS「Truth Social」を通じて再び反論を試みたが、これが核資料持ち出しをうっかり「告白」しているとされ、ツッコミが相次いだ。
この声明には「バラク・フセイン・オバマも、3,300万ページの文書を保管した。そのほとんどが機密扱いだ。核に関するものはどれほどあるだろう?答えは、大量にある!」と書かれている。
オバマ氏のミドルネームがイスラム教に多い「フセイン」であることをさりげなく示しつつ、“オバマ氏だってやったこと”という論調に対して、ポリティコのアンドリュー・デシデリオ記者はツイッターで、「トランプ氏の新たな声明は、自分が核関連文書をホワイトハウスから持ち出したと認めたということ?」とコメント。NBCのベン・コリンズ記者は、「”みんな核文書を盗んでいる”、と思ったより早く認めた」と皮肉った。カイル・オートン氏(英ロンドンのテロ・国家安全保障問題アナリスト)も「核に関する最高機密文書を“家”に持ち帰ったことを、トランプ氏は否定していないようだ」と指摘。ハリウッド・リポーターの編集者、キム・マスターズ氏は、一言「自白」とツイートした。
そもそも「オバマ氏が保管した」との主張に対する反論も投稿されている。
ワシントンポスト紙の記者グレン・ケスラー氏は「突飛な問題のすりかえだ—オバマ氏は国立公文書館と協力のもと、自分の大統領図書館に移動させただけ。トランプ氏は国立公文書館に置いておくべき資料を自宅に持ち帰った」と指摘。ライターのゴールディ―氏は「(オバマ氏の場合は)機密文書はなく、国立公文書館監修のもと、政府の管理下で大統領図書館に移した」と説明した。
国立公文書館(NARA)も自ら反論。ホームページで「バラク・オバマ大統領が2017年に退任した際、大統領記録法に基づき、大統領の記録の独占的な法的かつ物理的に管理する権限を引き受けた」とした上で、「約3,000万ページの機密扱いではない記録をシカゴにあるNARAの施設に移動し、NARAが独占的に管理している」と解説。続けて、機密資料は「ワシントンD.CにあるNARAの施設に保管している」と加え、「大統領記録法によって義務付けられているように、オバマ元大統領は、NARAが大統領記録をどこに、いかに保管するかについて管理権限を持たない」とトランプ氏の発言を訂正した。
なお12日午後、司法省とトランプ氏双方の同意の下に捜索令状と押収品目録が公表された。令状からは、捜索が「記録の削除または破壊」「捜査妨害」「スパイ活動法違反」といった3つの容疑の可能性をめぐるものであったことが判明した。押収品目録には33項目が示されており、この中には「various classified/TS/SCI documents(さまざまな機密/トップシークレット/細分化された機密情報)」や「Miscellaneous Top Secret Documents(その他極秘文書)」「Confidential Documents(機密文書)」といった表記が並んでいる。