8日に実施されたトランプ氏の家宅捜索で、FBIは令状の取得にあたって、裁判所に、前大統領がスパイ活動法違反をはじめ複数の違法行為にあたる可能性を示していたことがわかった。
12日に公表された捜索令状では、押収品について、「刑法793条(スパイ活動法違反)、2071条、1519条」に違反して不法に所持されている「証拠となるすべての物理的資料、記録」とある。
同時に機密が解除された押収品目録には、33項目が示されており、この中には「various classified/TS/SCI documents(さまざまな機密/トップシークレット/細分化された機密情報)」や「Miscellaneous Top Secret Documents(その他極秘文書)」「Confidential Documents(機密文書)」といった表記が並んでいる。
スパイ活動法は第一次世界大戦開始後に施行された法律で、USA Todayによると、米国に損害を与えたり、外国の利益のために使用する意図で、国防に関する情報を取得、写真の撮影、コピーすることなどを違法としている。
一方、The Hillは、合法的に国防に関する情報を所持する人物が、これを許可されていない人物に提供または、提供しようとすることも違反となるとしており、違反した場合、罰金または10年の実刑が課される可能性があると伝えている。
トランプ氏は捜索後、自宅に保管された資料は、大統領時代に機密扱いを解いたものだとして、正当性を主張しているが、アリゾナ大学の法学教授、デレク・バムバウアー氏は同サイトに、スパイ活動法では、情報や資料が機密扱いかどうかは、違反と「まったく無関係」と指摘している。
793条は7項目から構成され、トランプ氏のケースにどのように適用される可能性があるのか、専門家の間で見解が異なるようだ。
バムバウアー教授は、第1項では、情報が米国に危害を与えることに使用される意図または、そう考える理由が容疑者になければならず、弁護側は「情報が国家安全保障を脅かす可能性があることを知らなかった」と弁解する可能性があると説明。一方で、第6項では、資料を合法的に所有する人物が「重大な過失」によって、適切な場所から持ち出されることを許可した場合は違反とされるとし、これがトランプ氏のケースで起訴につながる可能性があると語った。
一方、ジェリー・グリーソン元連邦検事はThe Hillに、第4項では、資料を「故意に保持」し、当局者や政府職員の要求に応じて提供することを拒否することを違反としており、この部分がトランプ氏に対する訴訟で役割を果たす可能性があると説明した。
同氏もバムバウアー教授と同様、「(資料が)トップシークレットである必要はない」と説明。ただし「米国に損害を与えるために使用される可能性のある国防に関する情報である必要がある」と述べている。
なおCBSニュースによると、スパイ活動法に基づいて有罪となった人物には、米国とロシアの2重スパイで逮捕された元FBI捜査官ロバート・ハンセンや、元CIA工作員オルドリッチ・エイムズといった重罪人がおり、それぞれ終身刑を受けている。ただし同局は、両氏を裁いたのは、トランプ氏の捜索令状に示されたものとは異なる「外国政府の支援のための防衛情報の収集または提供」に関する違反を記した794条だと指摘している。