故ジェフリー・エプスタインの元ビジネスパートナーで、大型の金融詐欺事件を起こし18年の実刑に服したスティーブン・ホッフェンバーグ氏(77)がコネチカット州ダービーにある自宅で死亡したことがわかった。
ダービー警察によると、23日午後8時に生活状態を確かめてほしいとの通報を受け、家を訪れたところ、白人男性が死亡しているのを発見した。24日に行った検視では外傷はみられず、死因の特定には、今後実施する毒物検査を待つ必要があるとしている。発見時、遺体は「肉眼で身元が確認できない」状態だったといい、当初は氏名は明らかにされなかったが、26日になって、遺体はホッフェンバーグ氏であることが確認されたと発表した。
ニューヨークタイムズによると、ダービー警察は取材に、遺体は死後1週間ほど経過していた可能性があると話したという。
ホッフェンバーグ氏は1995年、70年代に創設した「タワーズ・フィナシャル」で4億6,000万ドルにのぼる巨額の詐欺を働いたとして有罪となり、刑務所に18年間服役した。同社は1980年代後半から90年台前半にかけて、エプスタン氏をコンサルタントとして雇っていた。エプスタイン氏は同事件に関連して一度も起訴されることはなかったが、ホッフェンバーグ氏は後に、詐欺を首謀したのはエプスタイン氏だったと振り返っている。
ちなみにエプスタイン氏は、マンハッタンの高校の数学教師を退職した後、ベアー・スターンズでウォール街のキャリアをスタート。すぐにリミテッド・パートナーとなるが、1981年に突然辞任し、富裕層のマネー・マネジメントを行う自身の企業を立ち上げた。
ワシントンポスト紙が裁判資料などを元に伝えたところによると、ホッフェンバーグ氏は、英国の武器商人ダグラス・リーを介してエプスタイン氏と出会ったとしており、1987年から1993年までエプスタイン氏に毎月2万5,000ドルを支払い、さらに200万ドルのローンを提供していた。
タワーズは債券回収企業としてスタートしたが、エプスタイン氏が加わった80年代後半にイリノイ州の保険会社2社を買収し、さらにパンアメリカン航空の買収計画に乗り出した。パンナムの買収が可能と見せかけるため、保険会社の資金をタワーズに横流しするとともに、家族の学費や自身のプライベートジェット代、さらに先述のエプスタイン氏の報酬の支払いにあてていた。
パンナムの買収が失敗に終わると、1988年に追加で180万ドルを保険会社から引き出して、貨物航空会社の買収を計画した。しかし、これも失敗すると、保険会社は支払い不能に陥り、州の管理下に置かれることになった。さらにタワーズは、イリノイ州とオハイオ州の被保険者の医療費数百万ドルを失ったとして、州と証券取引委員会から提訴された。
ニューヨークタイムズによるとタワーズの詐欺は1988年にさらに拡大。未亡人や退職者、障害者など、収入の少ない人々を標的に、高い利回りを約束し、2億7,000万ドルを超える約束手形を販売した。ホッフェンバーグ氏はこの間、財政難に陥ったニューヨークポスト紙のオーナーになったこともあった。
ホッフェンバーグ氏は1993年2月に起訴され、この翌月、タワーズは破産法の適用を申請した。被害者は20万人近くに上るとされ、犯罪規模は、史上最大のポンジスキームの一つとされた。ホッフェンバーグ氏は1995年、証券詐欺や司法妨害など5つの罪を認め、1997年から服役した。
出所後、被害者に償いをしたいと述べていたほか、エプスタイン氏の性的虐待の被害者らとも親交があった。
ホッフェンバーグ氏の訃報を最初に伝えた英デイリー・メールによると、通報者はエプスタイン氏の被害者の一人、アニー・ファーマー氏だった。
ファーマー氏は同紙の取材に、ホッフェンバーグ氏は一ヶ月前にオミクロンにかかり、回復に苦しんでいたと説明。関係について「地球上で最も親しい友人」で自分の父親よりも父親らしい存在だったと語っている。