リベラルの富裕層で、外国の市民権を得ようとする人が増えているという。
デイリービーストによると、「ゴールデンビザ」の取得を助けてきた移民弁護士、デビッド・レスぺランス氏は、同サイトの取材に、今年の夏以降、リベラル寄りのクライアントからの相談が9倍から10倍増加していると説明。一方、コンサルティング会社のエリック・メジャー氏は2021年の議事堂襲撃事件以降、増加していると語った。
ゴールデンビザは、外国政府が、多額の投資をする代わりに居住許可や市民権を与えるプログラムの通称で、30ヵ国ほどで取得が可能だという。取得コストは国によって数十万ドルから、数百万ドルと様々で、デイリーメールは、トルコが40万ドル、マルタ共和国100万ドル、ヨルダン150万ドル、オーストラリア1,000万ドル程度だとしている。
メジャー氏は、顧客の資産状況に応じて、3段階の選択肢を用意しており、4人家族で資産総額が200万ドル程度ならばカリビアン諸国、数千万ドルならEU各国にアクセスが可能なマルタ、超富裕層にはオーストラリアを勧めているという。
プログラムの利用者は過去、富裕税の導入を警戒する人々や、IPOを控えたIT企業関係者、仮想通貨の投資家などが多かったという。
一部の専門家の見解によると、ここ数年の外国市民権を求める人々の増加は、パンデミック期間中、米国パスポートが海外で入国を禁止されたことからはじまり、2020年の選挙前後には、バイデン時代突入で富裕層がターゲットにされることを懸念した保守派の金持ちが、2021年1月6日以降はリベラルの富裕層が増加した。
中には、最高裁の人工妊娠中絶をめぐる判決や、テキサス州の小学校で起きた銃乱射事件を受け、米国で家族を育てることに懸念を抱く人々もいるほか、バイデン氏の支持率が低迷する中、2024年にトランプ前大統領が再選することを恐れて相談に訪れる客もいるという。
実際には国内にとどまり、保険として取得するだけのケースが多いものの、専門家の中には、民主主義制度が不安定化し、市民が自信を失っている兆候と見るも者もいるという。
ちなみに、NBCニュースが8月に実施した最新の世論調査では、有権者の重大な関心事は「民主主義への脅威」が「生活コスト」を抜いてトップとなった。さらにYouGovとエコノミストの世論調査では、5人に2人が、今後10年以内に米国で内戦が起きると答えるなど、政治的な分断をめぐって不安が広がっていることが示された。