エリザベス女王の死去に伴って、王室の莫大な資産やチャールズ国王が受け継ぐ遺産にも注目が集まっている。
ニューヨークタイムズによると王室の資産は大きく4つに分類される。
一つ目は「クラウン・エステート」と呼ばれる王室財産の管理事業で、ロンドン市内の高級な土地建物から海岸線、海底、林業、農業など総額156億ポンド(約2.5兆円)の多様なポートフォリオから成る。公式には君主に属するものだが、独立組織によって管理されている。組織を率いる役員会の議長は国王が務めるが、事業の運営に関する最終的な決定権を有しない。事業により生じた利益は財務省に支払われ、王室はこのうちの25%を王室助成金として受け取る。バッキンガム宮殿の維持を含む王室の公務に伴う支出を賄うことを意図したもので、2021-2022年の王室助成金額は8,630万ポンド(140億円)だった。ちなみに王室メンバーの警備費用は含まれていない。経済的自立を確立するとして王室から離脱したヘンリー王子とメーガン妃は、2020年に受け取らないことを発表している。
二つ目はランカスター公領という君主が所有するエステートで、183,000平方メートルの土地を網羅し、資産価値は6億5,300万ポンド(1,000億円)にのぼる。女王は、ここから賃料収入をはじめとする収入を得ており、昨年の収入は2,400万ポンド(39億円)と報告されたという。
もうひとつの私有地、コーンウォール公領は、ランカスター公領を著しく上回る広さ(517,000平方メートル)で、英国の全土地の0.2%を占めるといわれる。ウェールズ公が管理、運営する。つまり、エリザベス女王が死去するまでは皇太子だったチャールズ国王のもので、ホームページによると昨年は約2,100万ポンドの収入をもたらした。チャールズ国王はこれを自分や子供、その家族をサポートするための費用やフィランソロピー活動に使用したと記されている。
最もベールに包まれているとされるのが、女王の個人資産で、一部では4億3,000万ポンド(700億円)とも報じられている。これには私物の宝石やアートコレクション、個人投資、バルモラル城やサンドリンガム・ハウスなども含まれる。
ワシントンポスト紙によると、王室では伝統的に、君主の遺言を公開しない。慣習に従えば、チャールズ国王はランカスター公領を自動的に受け継ぐことになる。コーンウォール公領については、ウィリアム皇太子に譲渡することを自ら明かにしている。クラウンステートから生じる王室助成金も引き続き受け取るとみられる。
莫大な遺産を受け継ぐチャールズ国王だが、相続税を支払う義務がない。1993年に議会を通過した法律は、先代の君主から引き継いだプロパティについて、国王は税金の支払いを免除されるとしている。ちなみに一般市民の相続税の税率は、32万5,000ポンドを超える場合に40%とされている。所得税とキャピタルゲイン税にも法的責任を負わないとされているが、女王は1993年以来自発的に支払ってきたという。