バイデン大統領は、6月に行ったゼレンスキー大統領との電話会談の最中、声を荒げる場面があったという。NBCニュースが関係者らによる話しとして伝えた。
バイデン氏は6月15日の声明で、朝のゼレンスキー氏との会談で「ウクライナの民主主義を守り、主権と領土の保全を支援するために、ウクライナを援助するというコミットメントを再確認した」と述べ、ゼレンスキー氏に追加で10億ドルの安全保障支援を提供することを伝えたと発表した。
この時の追加軍事支援の発表は、ロシアの侵攻開始以来12回目で、ペンタゴンは内容について、155mm榴弾砲やこれを牽引する戦術車、高機動ロケット砲システム「ハイマース」の砲弾のほか、対艦巡航ミサイル「ハープーン」2基、無線や暗視装置、装備の扱い訓練や保守サポートが含まれると発表している。
約40分ほどの会談の中で、バイデン氏が声に怒りを滲ませたのは、追加支援10億ドルにゴーサインを出したと伝えた直後に、ゼレンスキー氏が、まだ得られていない支援を並べ始めたときだったという。
会話を知る関係者によると、バイデン氏はカッとなり、米国民は寛大で、自身の政権と軍はウクライナを助けるために懸命に働いていると声を荒げ、ゼレンスキー氏はもう少し感謝を示してもよいのではないかとたしなめたという。
バイデン氏と側近らは、可能な限り迅速に事を進めているにも関わらず、ゼレンスキー氏は表向きに不足している点にばかり焦点を当てていると感じており、バイデン政権はこの数週間前から不満をつのらせていたという。
両者の衝突は、ウクライナ支援に対する米議会や国民の支持の弱まりを、バイデン氏が認識し始めていたことの現れとも考えられる。
現在、共和党議員と民主党議員の一部から、支援に懐疑的な声が上がっている。共和党下院のトップ、ケビン・マッカーシー院内総務は先月、11月8日の中間選挙で共和党が多数派を奪還した場合、ウクライナに対する「白紙の小切手」は提供しないと警告した。
ピュー・リサーチセンターが9月に米国民に実施した世論調査では、ウクライナが負けることを「極めて、または非常に懸念している」と答えたのは38%で、5月の55%から17%低下した。一方、ロシアが勝つことを「あまり、または全く懸念していない」と回答したのは5月の16%から26%に上昇した。
ロシアのウクライナ侵攻開始後、議会では、先月成立したつなぎ予算に含まれた120億ドルと合わせて、ウクライナ支援にこれまで約650億ドルの承認を与えている。来年の新議会で支援に対する懐疑的な見方が強まる可能性が指摘されるなか、現在、ホワイトハウスと議員らの間で、中間選挙後から新会期までの間に、過去最大規模となる500億ドル前後の新たな支援を早急に確保する案が話し合われているという。