ウクライナ戦争に関する発言がロシアよりだとして、批判を招くこともしばしばあるトランプ前大統領。この度、SNSに投稿したあるコメントが、ロシア政府から高評価を受けた。
ロシアによる侵攻開始から11ヶ月を過ぎた27日、トランプ氏は、自身が立ち上げたソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、自分が現職の大統領だったら「ロシア/ウクライナの戦争は起きていなかった」と主張。もし起きたとしても自分なら「この悲惨で急激に悪化する戦争を、交渉で24時間以内に終わらせることができた」と持論を展開した。
ロシアの国営メディアRTによると、この同日、ロシアのペスコフ大統領報道官は記者会見の席でトランプ氏の投稿内容に言及し、「理論上は、真実からそう遠くはない」と評価した。「確かに、米国の大統領がこの紛争を終わらせたいと本気で願うなら、すぐにそうすることができる。単にキーウの政権に手順を教えてやればいいだけのことだ」と続けた。
ペスコフ氏は「一夜とか、数日程度」では解決できないとしつつ、「いろいろな意味で、ウクライナの鍵はワシントンが握っている」と強調。しかしバイデン大統領はその路線には消極的だと訴え、収束させる代わりに「さらに武器を与えてウクライナを鼓舞している」と、軍事支援の拡大を非難した。
米国とドイツは今週、これまでの消極姿勢を一転、ウクライナに西側の戦車を供与する方針を固めた。ロシア側は、こうした支援はウクライナの自衛手段を超えたものだとして、欧米やNATOへの反発の声を強めている。
ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使は、「米国は傀儡政権に対する軍事支援のバーを上げ続けている」とした上で、「明らかに我々に戦略的敗北をもたらそうとしている。クリミアへの攻撃に米国の援助を利用することにゴーサインを出している」と主張。戦車の提供は「防衛兵器」の議論を正当化することは不可能だとし、「ロシア連邦に対する露骨な挑発行為であり、現在の紛争において、誰が本当の侵略者であるのか、誰も幻想を抱くべきではない」と述べた。
国営テレビの司会者でジャーナリストのウラジーミル・ソロヴィヨフ氏は「ドイツの戦車の登場は、ドイツ領土や軍事基地その他が正当な標的とみなされることを意味する」と警告。「NATOは戦っていないふりをして、ずる賢く戦おうとしている。ピストリウス独国防相は自国を直接破壊の地へと導いた愚か者として、歴史にその名を残すだろう」と挑発した。
ロシアのラブロフ外相は先週、紛争を解決に導くための「すべての真剣な提案に応じる用意がある」としつつ、「ウクライナの行く末を決めるのは欧米」とアピールしていた。
一方、バイデン米大統領は25日、エイブラムス戦車の提供の発表に際し、「(ウクライナ軍が)自国を解放するために、進化するロシアの戦術・戦略に戦場で対抗できるようにする必要がある」と説明。「長期的にロシアの侵略を抑止し、防衛するための永続的な能力が必要だ」と、ウクライナの自衛支援を超えない範囲であることを強調した。
26日、日・EU次官級協議で東京を訪れたステファノ・サンニーノ欧州対外活動庁事務総長は、記者会見で、戦車の供給に関して、いわれのない侵攻に対するウクライナの自衛を助けるためと念を押しつつ、「武器供給という観点では、この最新の展開は状況の進化で、ロシアが戦争を別のステージに進め始めたことだと思う」と、ロシアが招いたものだと強調。ロシアの攻撃は、市民や都市に対する「無差別攻撃」であり、もはや軍事目標ではないと加えた。