コロナで賃料滞納、創業130年の老舗チーズ店が閉鎖へ

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ニューヨークの名物店が、また一つ姿を消す。約130年前にニューヨークのリトルイタリーで創業した老舗チーズ店「アレヴァ・デイリー」(Alleva Dairy)が来月閉店することがわかった。オーナーのカレン・キングさんはNBCニューヨークに、3月5日に店をたたむと語った。

マルベリーとグランドストリートの角に位置する同店は、モッツアレラチーズやリコッタチーズ、サンドイッチなどのほか、店頭でイタリアの伝統的なスイーツ「カノーリ」やジェラートが人気。

Alleva Dairy(©Mashup Reporter)

1892年にイタリアのベネベントからの移住したピナ・アレヴァさんが創業し、2014年にカレンさんと夫の”チャ・チャ”こと(ジョン・チャルチャ、アレヴァ家の親戚)さんが、同店を買い取るまで一族が店を営んできた。

アレヴァが開店した当時は、地下鉄のトンネルを掘る労働者や富裕層など、イタリアから大量にニューヨークに移り住んだ時代だった。イタリアの調理技術と米国の食材が融合し、母国よりも豊かなイタリア系アメリカ料理が誕生した。

ちなみにチャ・チャさんは、店を買収した翌年に亡くなっている。チャ・チャさんは俳優で、「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」や「グッドフェローズ」などの有名作品に出演していた。カレンさんは、夫は「非公式のリトルイタリーの市長だった」と語るなど、よく知られた存在だったという。

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観光客で溢れるリトルイタリーは、パンデミックで大きな被害を被った。ニューヨークタイムズによると、アレヴァは賃料を約2年間滞納した後、昨年9月に破産を申請した。建物の所有者と店は、滞納した62万8,000ドルの賃料を巡って、法廷闘争を繰り広げていたが、店側が3万1,000ドルを支払い、3月5日までに退去することを条件に、残りの賃料を免除することで和解したという。

カレンさんはNBCニュースのインタビューで「お客様や、アレヴァを愛していた夫のことを思うと、胸が張り裂けそうだ」と悲痛な思いを語った。現在は別の場所で、再オープンすることを検討しているという。「奇跡が起きるとは思わない」と述べつつ、「私たちがここで提供する質や作っている食品、人々が訪れる理由、私はそれを持っていく」と事業継続への決意を示した。

Mashup Reporter 編集部
Mashup Reporter 編集部です。ニューヨークから耳寄りの情報をお届けします。