著名な投資家でフィランソロピストのジョージ・ソロス氏は16日、翌日から開催されるミュンヘン安全保障会議に先駆けて行った講演で、気候変動を抑えるために、北極圏に人工的な雲を作り出す構想を紹介。支持する考えを語った。
ソロス氏のトピックは、気候変動からウクライナ紛争、2024年の米大統領選までと多岐にわたった。
気候変動について、グリーンランドを例に、北極域の氷床の溶解は海面を7メートル上昇させ、人類の文明が危険にさらされると述べた上で、これを回避する方策がないか考えていたところ、英政府の元主任科学顧問で気候学者のデービッド・キング卿を紹介されたと説明。
同氏について「キング氏は、気候学者の間で広く共有されている理論を考案した人物だ。北極圏は予測可能な、円形で反時計回りの方向に吹く風によって残りの世界から遮断されていたが、人工的な気候変動が、この孤立を破壊したのだ」と話した。
ソロス氏の説明によると、こうした破壊により、北極圏に保たれていた冷たい空気が外に漏れ、代わりに南から吸い上げられた暖かい空気が侵入。手付かずだったグリーンランドの氷床が溶け、雪氷が持つ「アルベルト効果」と呼ばれる太陽エネルギーを反射する役割が損なわれているのだという。
キング氏は「地球上空に白い雲を作ることで、アルベド効果を再現する」プロジェクトを進めており、ソロス氏は、うまくいけば「地球全体の気候システムを支配している北極の気候システムを安定化させるのに役立つ可能性がある」と主張。現在の気候変動対策が焦点を当てる「緩和策と適応策」だけでは不十分で、気候システムを修復する必要があると語った。
フォックスニュースによると、キング氏は2019年にケンブリッジ大学に創設した気候修復センターで、北極の再凍結や炭素排出削減、温室効果ガス除去の研究を進めている。再凍結は、夏の間に北極と南極、ヒマラヤで人工の雲をつくり太陽光を反射させるという提案で、キング氏は比較的安価に実施できると主張している。
ソロス氏はまた「気候変動への対応を変えなければ、われわれの文明は、温度上昇によって完全に破壊され、世界の大部分は事実上住むことができなくなる」と警告した上で、キング氏が自らが計画を説明するビデオを紹介した。