ウクライナのゼレンスキー大統領が、今週末開催の第95回アカデミー賞授賞式にリモート出演を申請し、却下されていたことがわかった。Varietyが伝えた。ゼレンスキー氏が同賞主催者から出演を断られたのは2年連続。
ロシアによるウクライナ侵攻以来、ゼレンスキー氏は国連や各国議会をはじめ、各種授賞式などの主要イベントに積極的に参加し、対ロシア戦への支援を繰り返し訴えてきた。昨年はカンヌやベネチアの国際映画祭のほか、グラミー賞授賞式にもリモートで参加。9月にはニューヨーク証券取引所で取引開始を告げる「オープニング・ベル」にもリモート参加した。
今年1月のゴールデングローブ賞では、昨年ゼレンスキー氏のドキュメンタリー映画「Superpower」の監督を務めた俳優ショーン・ペンの紹介を受け、ゼレンスキー氏本人がビデオメッセージで参加。ロシアに打ち勝つ意志と「ウクライナ人の自由をめざし団結した、自由な世界の自由な人々」への賞賛を伝えた。
先月、ベルリン国際映画祭で「Superpower」がプレミア上映された際には、ゼレンスキー氏はリモートで演説を行った。
この流れでアカデミー賞の出演も試みたが、こちらはうまく行かなかったようだ。
情報筋によると、ゼレンスキー氏はアカデミー賞授賞式出演のために老舗タレント・エージェンシー会社WMEのエージェント、マイク・シンプソン氏を交渉人に雇っていたという。
シンプソン氏は、クエンティン・タランティーノ監督や、『パラサイト』で知られるボン・ジュノ監督のエージェントも担当したやり手の交渉人。「Superpower」でペンと共同監督を務めたアーロン・カフマン氏のエージェントを務めた縁で、ゼレンスキー氏のゴールデングローブ賞とアカデミー賞の授賞式出演交渉を担うに至った。ちなみにシンプソン氏の息子トミー氏は同作品で、ウクライナの女優兼歌手、ティナ・カロルと楽曲でコラボしている。
出演却下の理由は?
アカデミー賞授賞式のプロデューサー、ウィル・パッカー氏は昨年もゼレンスキー氏の出演申請を却下した。理由は公式発表されていないが、情報筋によると、有色人種が被害を受けた戦争をこれまで無視してきたハリウッドが、白人が被害者になっているウクライナ情勢だけに注目する点を懸念してのことだという。
ただ、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは伝統的に、映画界の中での活躍を重んじ、政治とは距離を置く姿勢をとっている側面もあり、実際の理由は不明。パッカー氏もコメントの求めに応じていない。
ゼレンスキー氏が出演を断られたのは、昨年のトロント国際映画祭でも同様。主催者側は当時、「国の要人や政府高官、各国大使らに関する事象にはコメントしない」規定だと説明している。同時に、「国内外において、われわれはウクライナとともにあり、今年の映画祭でウクライナの映画制作者の深層と創造性を紹介できることを誇りに思う」ともコメントした。
戦争が長期化するにつれ、米国内では、無期限の軍事支援に否定的な声が拡大しつつある。「Superpower」の制作にあたり、ペンは様々な会見の場で「長距離ミサイルの供与」を含むウクライナへの軍事支援強化を米政府に呼びかけていた。昨年12月には、ゼレンスキー氏が直に米国を訪問しバイデン大統領と会談したほか、米議会に対し、さらなる軍事支援を求めていた。