次々と到着する亡命希望者への対応に追われるニューヨーク市で19日、パンデミック中に閉館した歴史的ホテル「ルーズベルトホテル」が、「亡命希望者到着センター」として再オープンした。
コロナ対策を理由とした移民制限措置(タイトル42)が先週解除されたことを受け、ニューヨーク市では、南部国境を超えた後、ニューヨークに到着する亡命希望者が急増するとみて、対応を急いでいる。
エリック・アダムス市長は先週の会見で、市ではすでに140施設を移民の緊急シェルターとして解放し、6万5,000人を超える亡命希望者をケアしていると説明。ルーズベルトホテルは「すべての亡命希望者の集中受け入れセンターとして、移民に法律、医療、再会サービス」を提供することに加え、175室を子供と家族の滞在先として使用すると発表した。今後はこれを850室まで拡大する計画だという。
ニューヨークポスト紙が市管理予算局の資料を元に伝えたところでは、市では今年6月末から来年半ばまでに、移民や亡命希望者に関連する費用として42億ドル(約5,800億円)を見込んでいる。
セオドア・ルーズベルト大統領にちなんで名付けられたルーズベルト・ホテルは、ジョージ・ブラウン・ポスト&サン(George B. Post & Son)が設計を手掛け、1924年9月に開業した。映画『フレンチ・コネクション』や『ウォール・ストリート』『メイド・イン・マンハッタン』、ドラマ『マッドメン』などのロケ地としても知られる。
ABCニュースによると、この日は朝から十数台のバスが到着する予定だった。
午後になっても、ホテル前には新たに到着した人々の列があり、幼い子供の姿もあった。
市ではさらに500箇所の移民のための施設を探しているというが、市民の一部からは、こうした計画に不満の声も上がっている。
今週、市内の学校体育館を移民の短期的な宿泊先として使用する計画が明らかになると、保護者らによる抗議活動が起きた。
ルーズベルトホテルの前でバスが到着する様子を眺めていた女性は、市長の決定に「憤っている」と気持ちを話した。「パンデミックでニューヨーカーは傷つき、多くのビジネスが廃業した。家を失い、仕事を失った」と続け、「私の祖父はイタリアから合法的にやってきた。私たちは合法的にやってくる人々を歓迎するが、私たちには場所がない。学校の親たちも怒っている」と主張。自身を保守的と述べつつ、南部国境に到着した移民をニューヨークをはじめとするサンクチュアリシティに移送するテキサス州知事の措置について、「恐ろしい」と非難。テキサスが自分たちで対処するべきだと語った。