トランスジェンダーのインフルエンサー、ディラン・マルヴァニー氏をプロモーションに起用したことが、保守派の強い反発に遭い不買の声が広がった米アンハイザー・ブッシュの主力ブランド「バドライト」。直近のデータで、20年以上に渡って保ってきた米国内の売り上げNo1の座を競合に奪われたことがわかった。
ニューヨークポスト紙がコンサルティング会社の調査を元に伝えたところによると、6月3日を最終日とする過去4週間のリテールの売り上げのシェアは7.3%で、モデロ エスペシアル(8.4%)の後塵を排した。6月3日を最終日とする1週間の売り上げは対前年同時期で24.4%低下した。
モデロのほか、クアーズライトやミラーライトなどのライバルブランドも売り上げを伸ばしているという。
なお、バドライトとモデロはともに親会社アンハイザー・ブッシュ・インベブ傘下のブランドだが、米国では、司法省による独占禁止法訴訟の和解の一環で、米アンハイザー・ブッシュのライバル、コンスタレーション・グループがモデロのライセンスを所有している。
バーのケータリングサービス企業「Barnastics」の創設者、カタリーナ・タッカー氏はFOXニュースのインタビューに、マルヴァニー氏がTikTokにバドライトのPRを投稿した4月1日以降、消費者の好みに著しい変化が見られると話した。
タッカー氏は「需要は完全に激減しており、誰もイベントでバドライトを飲みたいと思っていない」と説明。「かつて人気を誇ったバドライトは、もはやイベント主催者や参加者の注目や熱狂を集めていない」と語った。
「(消費者は)バドライトに代わるものを積極的に求めており、クラフトビール、スペシャルカクテル、プレミアムスピリッツに傾倒している」とし、バドライトの人気が回復することはしばらくないだろうと予想を示した。
以前アンハイザー・ブッシュの流通・販売部門のトップを務めたアンソン・フレリックス氏は先月、デイリーメールの取材に、バドライトの売上低迷が続けば、ライバルに棚を奪われる危険があると指摘した。
同氏によると、ウォルマートやクロガーなどの小売は、春と秋に販売データをもとに棚の配分を見直す。秋の見直しは、4月~7月の売上を参照し、再配分が決定されるという。
棚の変更は長期的な影響を及ぼす。ライバルブランドは棚と店内在庫が増え、より成功の機会を得る一方、バドライトにとっては「ほぼ永久に、バドライトの売上高とビールカテゴリーにおけるシェアが、新たな標準として固定化されることになる」と説明した。
同氏は、アンハイザー・ブッシュは戦略を練って、6月と7月に失った顧客を取り戻す必要があるとも指摘。「8月、9月の頃には手遅れ」と語った。