知ってた?アメリカのグリーンカード(永住権)が抽選で当たるプログラム

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労働ビザを取るのが難しいと言われる米国ですが、政府のくじでグリーンカードがもらえるプログラムをご存知でしょうか。これは、Department of State(国務省)が主催するDiversity Immigrant Visa Lottery(多様性のための移民くじ)で、当選すると当選番号の若い順にグリーンカードがもらえるというものです。冗談のような話ですが法律に定められており、移民法の改正がない限り毎年10月ごろに1か月程度の申込期間が設けられます。

Q なぜくじの制度があるの?

このくじの政策目的は移民の多様性を推進するもので、過去5年間に5万人以上の移民(ここではグリーンカードの取得を意味します)を送っていない国の国籍者、またはその国で生まれた方のみに応募資格が与えられます。ここで注意が必要なのは、現在の国籍が応募資格のある国であっても、生まれた国が応募資格のない国であった場合、応募資格は原則としてないということです。

Q 当選確率は?

約1%弱です。ご夫婦の場合、それぞれが1通ずつ申込できますので2%弱になります。

Q 国籍の例外はないの?

しかし、この国籍要件には例外があります。まず、生まれた国が国籍と違う場合には、生まれた国の枠で応募することができます。また、配偶者の国籍の枠で応募することもできます。例えばインドで生まれたインド国籍の方の配偶者が日本国籍である場合、日本国籍であるかのように申請することができます。また、どちらかの親御さんが別の国でお生まれになった場合、色々条件はつきますがその国の国籍者であるかのように応募をすることができる場合があります。

Q そのほかの応募資格

応募時に満18歳以上であること。そして、高校卒業程度(小学校から数えて12年間の正式な教育を受けていること)の学歴か、過去5年以内に2年間以上、少なくとも2年の訓練を要する職業に就いているかです。これは面接の日までに要件を満たしていれば良いことになっています。高卒認定試験(旧大検)は試験に受かったというだけではこの要件を満たしません。大学で学び12年の要件を満たすことが必要です。

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Q 申し込み方法

10月初旬から始まるエントリー期間中に国務省のDV-2025のサイトで氏名、生年月日などの情報を記入し、指定のサイズの顔写真をアップロードして提出します。1人1回しか申込できません。現在はコンピューターで管理されていますので、複数申し込みをするとわかるようになっています。

Q 当選後

当選発表は毎年5月にあります。当選者には当選番号が割り振られ、その番号の順に翌米国会計年度(10月1日から始まります)中に手続きができます。注意しなければならないのは、当選者全員がグリーンカードを手にできる保証はないということです。番号が後ろの方である場合、自分の番号が回ってくる前に5万5千人の定員に達してしまうと手続きを締め切られてしまいグリーンカードを取得できないことになります。

Q 当選後の手続きの種類

当選後の手続きの仕方は2通りあります。米国内にすでに合法なステータスで滞在されている方は、Adjustment of Statusという米国の移民局での手続きか大使館面接の手続きかを選ぶことができます。米国外にいる方は大使館面接一択となります。手続きの締め切りはこの二つの方法で微妙に異なります。一般に会計年度の終わり(9月30日)が締め切りなのですが、Adjustment of Statusの場合その日までに面接を終えてApprovalを貰わなければならないのに対し、大使館面接ではその日までに移民ビザというものが発行されてさえいれば、米国入国はそのビザの期限まで(6か月間)に行えばよいというものです。この当選後手続きの部分はちょっとしたミスで却下されやすいので信頼できる弁護士に依頼することをお勧めいたします。

Q グリーンカード取得後、ほかの取得方法の人と何か違いがあるの?

ありません。20年かけて取得したグリーンカードもくじで取得したグリーンカードも取得後は同じ権利義務を与えられます。

寺井眞美(米国NY州弁護士)

寺井眞美
米国NY州弁護士。寺井法律事務所主宰。ビジネス移民法の他会社設立等を専門とし米国への進出・起業を20年以上サポートする実績を持つ。米国移民法弁護士協会多様性委員会委員、元出版編集委員。NYU School of Law Immigration Moot Court Judge.弁護士業を始める前は国家公務員として大型国際会議のホストなどを経験。ハーバードロースクール卒、東京大学経済学部卒。問い合わせはこちら