カリブ海諸国の伝統と遺産を称えるカーニバル、ジュヴェを前に、ニューヨーク市警察が裏庭で開催されるパーティーにまでドローンによる監視活動を行う計画を示し、物議を醸している。
毎年9月の第1月曜日は連邦政府の祝日「レイバーデー」であると同時に、ニューヨーク市ブルックリンでは、夜明け前に始まるパーティーとそれに続く西インド諸島デーパレードが盛大に催される。
暴力事件が多いことで知られ、2015年にはアンドリュー・クオモ知事の補佐官がギャングの銃撃に巻き込まれ頭を撃たれた。
2016年は、夜明け前のパーティーで学生が2人撃たれ死亡したほか、72際の女性がベンチに座っていたところ腕に銃弾を受けるなど、銃撃や刺傷事件が相次いだ。
Patchによると、NY市警察は今年、民間警備員を加えて警備を強化し、250人からなる危機管理システムチームが配備される予定。さらに地元ギャングにはすでに、通達で停戦を呼びかけているという。
そうしたなか、警察委員長の補佐官のカズ・カズ・ドートリー氏は31日の会見で「通報者から裏庭で大規模なパーティーが開かれ、大勢の群衆がいるとの話を受けたなら、われわれの資源を活用して、パーティーの様子を現場に行って確認するつもりだ」と説明。資源の配備計画は週末に決定すると述べつつ、「今晩から月曜日の朝までドローンチームを派遣する」と語った。
AP通信によると、この発表にニューヨーク自由人権協会のダニエル・シュワルツ氏は「憂慮すべき発表であり、POST法に反する」と反発。「このような方法でドローンを配備することは、SF にインスピレーションを受けたシナリオだ」と語った。2020年に成立したPOST法(The Public Oversight of Surveillance Technology 監視技術公的監視)では、警察に使用する監視技術による影響と使用に関する方針の公開を義務付けている。
監視技術監視プロジェクトのエグゼクティブディレクターで弁護士のアルバート・フォックス・カーン氏は「訴訟が作られつつある」と牽制。バーベキューの監視に低空飛行するドローンを使用することは、違法な捜索に対するニューヨーカーの憲法上の権利について疑問を提起している、と述べ、「乱用の成れの果て」と語った。
他の都市と同様、ニューヨーク市でも取り締まりにおけるドローンへの依存が高まっている。公衆の安全や緊急目的のドローンの使用は、2022年は4回だったものが今年は124回へと飛躍的に高まった。
つい最近では、先月、人気ライブストリーマーがマンハッタンのユニオンスクエアで開催したビデオゲーム機のプレゼント企画が暴動に発展した事件で、ドローンが出動した。
パトロール・ロボットの導入やロボット犬の活用といったテクノロジー推進派のエリック・アダムス市長はドローンの活用を支持している。先週イスラエルを訪問したアダムス氏は、同国の事例を挙げて、警察が「ドローンの無限の可能性」を採用することに期待していると語った。
↓今年4月に起きたビルの崩落事故で出動したロボット犬
裏庭にドローンを飛ばす発表をめぐって、ネットでは、ニューヨーク市を「屋外の巨大な刑務所」と揶揄する声や、「ビッグ・ブラザーがあなたを見守っている」とディストピアな世界が描かれたジョージ・オーウェルの小説『1984』の一句を引用したコメントが投稿されている。
一方、「撃ち落とされるんじゃない?」と、ギャングのパーティーには役立たないといった声も上がっている。