ファインスタイン議員(90)民主党の重鎮が死去:キャリアハイライト

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30年にわたる上院議員のキャリアで、司法委員会や情報委員会の委員長といった重責を担った民主党の重鎮、ダイアン・ファインスタイン議員が死去した。90歳だった。

訃報はファインスタイン氏の事務所によって発表された。28日の晩にワシントンD.Cの自宅で息を引き取ったとしている。死因は明らかにしていない。

1992年に初当選を果たしたファインスタイン氏は現職議員としては最年長で、カリフォルニア選出の上院議員として最長の在職期間を誇った。

近年は健康上の問題を懸念する声が高まっていた。2月には帯状疱疹で入院をし、後に脳炎を合併したと明らかにされた。5月に復帰したが、認知機能の低下の可能性が報じられるなどし、辞任を求める声も上がっていた。8月にはサンフランシスコの自宅で転倒し、短期間入院していた。

ハーヴェイ・ミルク事件が政治活動のバネに

1978年11月、政治に終止符を打とうと考えていた矢先、市監督委員会のハーヴェイ・ミルク氏とジョージ・モスコーニ市長が凶弾に倒れる事件が発生した。ミルク氏は同性愛者であることを公にしてはじめて公職者に選出された人物として知られる。全米が事件の行方を注視する中、委員長だったファインスタイン氏は会見で2人の死を発表した。悲鳴や叫び声が飛び交う中、容疑者は委員会のダン・ホワイトだと明らかにした。

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ファインスタイン氏は、2018年のロサンゼルスタイムズの取材に、ミルク氏のもとへ駆けつけた状況を「火薬の匂いがした。ハーヴェイはうつ伏せになっていた」と述べ、脈を測ろうとして「指が弾痕に入った」と振り返った。市長選に2度失敗したファインスタイン氏は、事件の朝、記者らに政治を引退する意向を話していたという。

「女性の年」に上院初当選

上院公式ページより

クリントン氏が大統領に当選した1992年の選挙は「女性の年」と呼ばれ、多くの女性議員が誕生した。結果、下院で女性議員の数は100人を超え、上院は初当選したファインスタイン氏を含む7人となった。

前年に行われたクラレンス・トーマス最高裁判事の指名承認公聴会は、セクハラを訴え出たアニタ・ヒル氏への対応や手続きをめぐって物議を醸し、男性支配の議会のあり方を問題視する声が広がった。

なお、性的暴行を受けたとする女性が名乗り出た2018年のブレット・カバノー最高裁判事の承認公聴会で、司法委員会の少数党トップだったファインスタイン氏は、当時のニューヨークタイムズ紙の取材に「すべての女性が変化を目撃した。あの瞬間に変化が起きたと思う」と女性の年を振り返り、「私が考えているのは、自分がこれを変えられるだろうかということだ」と語った。

銃規制を推進

1989年に小学校の児童ら5人が殺害されたストックトン銃乱射事件にはじまる一連の銃乱射事件を受け、クリントン政権の下で1994年に「アサルトウェポン禁止法」が成立した。法案を作成したのはファインスタイン氏で、上院では56-43で可決した。同法は10年間の時限立法で、抜け穴はあったものの半自動小銃の「製造、移転、所持」を禁止するとされた。

サンディフック小学校銃乱射事件の翌年2013年、ファインスタイン氏は改めて法案を提出した。司法委員会を通過させたが、最終的に上院で反対多数で否決された。

CIA「強化尋問プログラム」を調査

2001年に上院情報委員会のメンバーとなり、2009年に女性として初めて委員長に就任した。ファインスタイン氏の指導で、ブッシュ政権下でCIAが世界各地の秘密の刑務所で行なった「強化尋問」プログラムに関する広範な調査が行われた。開始から約5年後の2014年、主要な調査結果と結論をまとめた525ページの要旨の公表にこぎつけた。この中で、強化尋問に有効性は認められなかったとし、CIAは米国の地位を傷つけ、結果として多大なコストを生じさせたと結論づけた。報告書は全体で6,700ページに及び、今も非公開となっている。

この間、委員会とCIAとの摩擦は最高潮に達した。ファインスタイン氏は2014年3月の議会演説で、CIAが委員会のコンピューターをサーチし、その範囲は委員会のスタンドアローンのネットワークにある独自の内部資料やコミュニケーションにまで及んだと発表。CIAの行いは権力分立の原則を犯し、議会による情報機関の監督機能を弱めるものだと厳しく非難した。CIAのブレナン長官は否定したものの、後に内部調査でファインスタイン氏の主張が裏付けられ、謝罪を表明した。

ブレット・カバノー最高裁判事 指名承認公聴会

混乱を極めた2018年のブレット・カバノー最高裁判事の承認手続きでは、共和党からの非難の矢面に立たされた。司法委員会で民主党のトップだったファインスタイン氏は、カバノー氏から1980年代に性的暴行を受けたとする女性から書簡を受け取っていたが、承認投票の数日前にメディアによってリークされるまで書簡の存在を明らかにしなかった。結局、司法委員会では急遽投票日を延期し、女性を招き公聴会を実施することになった。ファインスタイン氏は女性から秘匿を求められたからだと説明したが、公表のタイミングなどをめぐり、トランプ氏をはじめ共和党からは、カバノー氏の承認を妨害するために意図的に隠し持ったと非難を受けた。

Mashup Reporter 編集部
Mashup Reporter 編集部です。ニューヨークから耳寄りの情報をお届けします。