米連邦捜査局(FBI)の捜査官が今週、ニューヨーク市のエリック・アダムス市長から携帯電話など数台の電子機器を押収していたことがわかった。
ニューヨークタイムズによると、月曜日、捜索令状を持った捜査官らがニューヨーク大学のイベントへの出席を終えたアダムス氏に歩み寄り、護衛に離れるよう命じた上で、市長のSUVに一緒に乗り込んだ。少なくとも携帯電話2台とiPadがすでに市長に返却されたという。タイムズは、捜査官は捜索令状に基づき、電子機器のデータを複製することができると指摘している。
捜索は、2021年市長選の違法献金疑惑の捜査に関するものとみられている。今月2日の早朝、市長の資金調達担当、ブリアナ・サッグス氏の自宅に強制捜査が行われたことで同捜査の存在が公になった。サッグス氏は市長の選挙運動コンサルタントで、政策推進にも深く関わっているという。
アダムス氏はこの日、ワシントンD.C.でホワイトハウス高官や議員らと予定していた移民問題に関する会合を取りやめ、急遽ニューヨークへと戻った。同日は記者らに、自身の選挙運動を「最高の倫理基準に基づいて」行なっていると擁護する一方、予定変更の理由について、捜査の展開を「現地で見る」ためだと説明していた。
なお、選挙キャンペーンの法律顧問、ボイド・ジョンソン氏は、アダムス氏自身は捜査対象ではないとしている。月曜日の捜索に関する声明では「直ちにFBIの要請に即座に応じ、電子機器を提供した」と説明した。一方、捜査の存在を知った後に「ある個人が最近不適切な行為を行っていたことが判明した」とも述べ、「透明性と協力の精神に基づき、直ちに捜査当局に積極的に報告された」と明らかにした。ただし、個人の特定や「不適切な行為」が何に関わるものかなどの詳細に言及しなかった。
タイムズによると、捜査官らは2日の捜索で、アダムス選挙陣営のメンバーがトルコ政府、またはトルコ出身の実業家の所有する建設会社「KSKコンストラクション」やトルコ人所有の大学と共謀して選挙資金法に違反した証拠を探していた。
捜索令状には、トルコ政府またはトルコ国籍者が、他人を通じてアダムス陣営に資金を提供したかどうかについて調べを進めていることが示されていた。さらに、アダムス陣営が使用した市のマッチング・ファンドプログラムにも言及があったという。
同プログラムは、一定条件の下、一般市民から受けた少額寄付について、ニューヨーク市選挙資金基金から数倍にあたる資金が候補者に提供される仕組みで、市民の参加を促進するとともに、候補者が裕福な寄付者に頼らずに資金を賄うことを促進する取り組み。
KSKコンストラクションとは
ポリティコによると、2021年の市長選では同社の従業員とされる11人が、同年5月の同じ日に1,200ドル~1,500ドルの寄付をしていた。アダムス陣営はそこからマッチングファンド18,000ドルを得る資格を得ていた。このうち10人は過去に政治運動に寄付した経歴がなく、もう1人、同社のオーナーのみが2009年に元ブルックリン区長マーティ・マーコウィッツ氏の選挙運動に1,000ドル寄付した記録があった。
ブルックリンに本社置く同社は、2000年台後半に始まったコンドミニアム建設ブームに積極的に参加し、2006年から2011年にこの地域で十数件のプロジェクトを手がけた。最近のプロジェクトでは、マンハッタンで2019年に完成した25階建ての高級コンドを建設していた。同ビルの建設中、7.5トンのクレーンのおもりが落下し、建設作業員が死亡する事故があった。遺族は2021年に同社を訴えている。
同社は、ジュリアーニ政権とブルームバーグ政権時代にハイラインの一部やハーレムの橋の建設などの都市プロジェクトの契約を勝ち取った建設会社キスカの従業員らによって創設された。キスカの幹部は2000年代、市運輸局の職員2人を有罪判決に導いた汚職事件をめぐって逮捕されたことがあった。