エリック・アダムス市長の選挙キャンペーンがトルコ政府から違法に資金を受け取った疑惑をめぐる捜査で、FBI捜査官らは市長の過去のトルコへの渡航歴にも捜査の焦点を当てているという。
捜査の存在は、今月2日に市長の資金調達担当の自宅に強制捜査を行なったことから明るみに出た。この翌週には、捜査官がアダムス市長から携帯電話など数台の電子機器を押収した。
なお、アダムス氏と資金調達担当者ともに、現時点で不正行為による告発は受けていない。
最初に旅行したのは州議会の上院議員だった時代で、先週の記者会見では、議員の代表団としてアゼルバイジャンを訪れた際に立ち寄ったものだと説明した。
同紙によると、アダムス氏はその後、ブルックリン区長だった2015年に2回、2017年に息子のジョーダン・コールマンさんと21日間の海外旅行に出かけた際にもトルコを訪れていた。
上院議員時代の旅行については、公務を兼ねたことを示唆したにもかかわらず、当時開示した財務報告にそのような記録がなかった。28日の記者会見で矛盾を指摘されると、「私的な旅行」で「感謝祭のジョークだった」と説明した。旅行には3人の議員も同行していたとし、記録を改めて確認すると述べた。
2015年の8月の渡航は、トルコ領事館、トルコ航空、イスタンブールにあるバチェシェヒシュ大学が資金を支援したとも報じられている。
これに加えて、ニューヨーク・デイリーニューズは、5つめの旅行は2018年に計画されたもので、トルコの非営利組織Young Guru Academyと、同組織が開発した「スマート杖」が絡んだものだと報じている。
スマート杖は、障害物を検知する技術やLEDの安全ライト、アプリを使ってグーグルマップと連動する機能を備えたもので、当時の報道によると、アダムス氏率いる区長室は一本395ドルの杖を補助金を使って「数多く」購入し、視覚障害者を支援するHelen Keller Services for the BlindやMTAと協力して、公共交通機関で試験的に導入する計画を発表していた。
なお、同紙の取材にMTAは、「スマート杖」を試験したことはないとするなど、プロジェクトへの関与を否定している。
これまでに報じられているところによると、トルコ旅行以外の捜査の焦点は、トルコ出身の実業家が運営する建設会社「KSKコンストラクション」の従業員らから渡った献金や、アダムス氏が市長選で民主党の指名を獲得した後、国連近くにある35階建てビルの占有許可をめぐって、トルコ政府の求めに応じて消防局に働きかけた疑惑にも及んでいるとみられている。ニューヨークタイムズは、2021年5月に完成した同ビルは、防火システムに多数の問題を抱えていたが、アダムス氏の「異例の介入」により、同年9月に国連総会でニューヨークを訪れたトルコのエルドアン大統領が、オープニングセレモニーを開く道が開けたと伝えている。