NY州 奴隷制度の補償検討へ、委員会設置

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ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は19日、奴隷の子孫への補償について調査研究を行うための特別委員会を設置する法案に署名した

ホークル氏は今後「さまざまな補償の形態や、過去の過ちを正す方法」について研究を行うとしている。「教育や住宅、医療、環境などに存在する弊害や格差を特定し、ニューヨークの奴隷の子孫を助けるための今後の実現可能な道筋を提示できれば、われわれの気分も高揚するだろう」と委員会への期待を語った。

ニューヨーク州で奴隷制が廃止されたのは1827年。リンカーン大統領が奴隷解放を宣言する36年前だった。ウォール街では奴隷を売買する「マーケット」があり、ニューヨーク州で制度が廃止された後も奴隷貿易は続けられていたという。ニューヨークタイムズによると、新たな委員会では、アフリカ系アメリカ人に対する住宅差別や偏向的な警察の取り締まり、所得の不平等、大量のアフリカ系アメリカ人の収監などについて調査を行う

会見に参加した人権活動家のアル・シャープトン師は、委員会の設置は「苦痛や傷を完全に癒すことができなかったとしても、補償されるべきだと多くの人々に認識されることで、得られるものが多い」と語った。

カリフォルニア州ではギャビン・ニューサム知事が2020年、補償に関する特別委員会を設置する法案に署名した。今年5月には、賠償プログラムと正式な謝罪を発表することを求める勧告が承認された。州議会や知事が支払いに合意した場合、アフリカ系アメリカ人に対する補償額は、1人あたり120万ドル(約1億7,000万円)以上、総額8,000億ドル(約115兆円)になる可能性があると伝えられている。

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カリフォルニア州は現在、歳入不足により680億ドルの財政赤字に直面している。ニューヨークポスト紙は、ニューヨーク州の黒人の人口はカリフォルニア州よりも70万人以上多いうえ、州予算は2,290億ドルであることから財源や実行性に疑問を呈した

2021年に行われたピュー・リサーチの世論調査では、黒人の77%が奴隷補償を支持すると回答したが、白人は18%だった。

州議会上院議員のトップ、ロブ・オート氏は声明で「カリフォルニア州の委員会の勧告は非現実的で、すべてのニューヨーカーに天文学的な犠牲」をもたらすと指摘。「分断を悪化させるだけ」と委員会の設置に反対を表明した。

ホークル氏は会見で「補償という言葉は対立を生み出す」ことは理解していると述べつつ、すべての州民は「愛国的となり、奴隷制度の恩恵を享受してきた我々の役割を非難し、弁解しないよう」呼びかけた。