トランプ政権で大統領主席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏は、今後、ニッキー・ヘイリー氏をトランプ氏のランニングメイトに据える圧力が強まると予測し、「われわれには、この春に大きな戦いがある」と語った。
ジャック・ポソビエク氏のポッドキャストに出演したバノン氏は「彼らは、ニッキーを候補者にしようとするだろう。彼らは、トランプには女性が必要で、ニッキーを選べば、彼女がバランスをとってくれて、共和党の”ネバー・トランパー”の15%を束ねることができると言ってくるだろう」と見通しを示した。
その上で、「われわれは戦わなければならない。ニッキー・ヘイリーがいかなる立場であろうと、政権に入るならば失敗する。彼女は毒蛇だ」と激しく抵抗する姿勢を示した。「彼女は首相のように運営しようとするだろう。ディック・チェイニーになろうとする。トランプにとっての彼女は、ブッシュにとってのディック・チェイニーと同じだ。 それが彼女がやろうとしていることだ」と続けた。
米政治サイトのポリティコは先月、トランプ氏が、ライバル候補のヘイリー氏をランニングメイトに選ぶ案について、周囲に意見を求めたと報じた。
バノン氏は、今回の選挙は党派ではなく「ポピュリスト・ナショナリズム対エリート・グローバリズム」の争いと主張。ヘイリー氏は「ネオコン」であり「彼女の最大の寄付者の中には、急進的な反トランプの民主党員のリード・ホフマンがいる」と加えた。
ニューヨークタイムズは先月、民主党の主要な寄付者でLinkedInの共同創業者、リード・ホフマン氏が、ヘイリー氏を支持する特別政治活動委員会「SFA Fund Inc., 」に25万ドルを寄付したと報じた。これを受け、トランプ氏は支持者に送ったメールで「グローバリストの特別な利害を持った寄付者たちが、われわれを倒そうと邪悪な同盟を結んでいる。わたしは君たちのような草の根の寄付者たちに抗戦を呼びかける」と訴えていた。
ヘイリー氏の副大統領候補案をめぐっては、バノン氏以外にも、トランプ派の議員などから強く反発する声が上がっている。
マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア 共和党)は先月、X(旧ツイッター)で、副大統領どころかトランプ政権のインターンになるだけで「MAGAが反乱を起こす」と警告し、「彼女は、我々が縁を切った共和党のネオコンのエスタブリッシュの残党」と反対を表明した。
長男のトランプ・ジュニア氏は、ニューズマックスのインタビューで、ヘイリー氏には副大統領になってほしくないとキッパリ。「彼女から得られるものといえば、終わりなき戦争と、ドナルド・トランプを内部から永遠に破壊しようとするチームだけだ」と答えた。
Foxニュースの元司会タッカー・カールソン氏もポッドキャスト番組のインタビューで「できる限り強く反対する」と主張。ヘイリー氏を「有毒」「左派ではないが、最も暗い意味での新自由主義」「オリガルヒの産物」と批判を展開した。
なお、ヘイリー氏自身は可能性を完全に排除していない。先月28日に開かれた選挙集会で、「トランプ氏の副大統領になることを受け入れないと断言できますか?」と聞かれると、「あなたが聞きたいことを言ってあげることもできるが」「私は真実を話し続けるつもり。トランプ大統領と良い協力関係にあった。なぜって?彼に真実を話したから」と長い前置きをしつつ、「私は二番手を争うつもりはない。一度も二番手になるために競ったことはない」とあいまいな回答を続けた。
ヘイリー氏は現在、フロリダ州のデサンティス知事と支持率で互角の争いを展開している。FiveThirtyEightの全国世論調査の集計では、首位トランプ氏(61.3%)に対して、デサンティス氏とヘイリー氏は11.3%で並んでいる。
ランニングメイトの公式発表は、大統領指名候補を確定する夏の党大会近くに行われるのが一般的で、バイデン大統領がハリス氏を発表したのは2020年8月11日、トランプ氏がマイク・ペンス氏を発表したのは2016年7月14日だった。