トランプ前大統領とともにジョージア州フルトン郡で起訴されたマイク・ローマン被告は8日、事件を監督するファニ・ウィリス地区検事は、公正な手続きを経ずに恋愛関係にあった民間の弁護士を特別検察官に任命したと主張。起訴には「構造上の誤りと修復不能な欠陥」があるなどとして、裁判所に起訴の取り下げを求める申し立てを行なった。
ローマン氏は元トランプ選挙陣営のスタッフで、昨年8月、2020年選挙を覆す取り組みに関連して、トランプ氏らとともにフルトン郡大陪審によって起訴された。
特別検察官に任命されたネーサン・ウェイド氏は、2021年11月1日にウィリス氏と契約を締結し、12月時点で、65万ドルの支払いを受けている。
ローマン被告の主張によると、ウィリス氏は、ジョージア州法に反して特別検察官の任命に必要とされる郡委員会の承認を経ずに独断でウェイド氏を採用した。一方、ウェイド氏は特別大陪審の手続きを進める時点で、「就任宣誓書」を提出しておらず、特別検察官としての正式な権限を与えられていなかった。
ローマン被告は、ウィリス氏が承認の手続きを回避することを「選択」したのは、二人の恋愛関係を知られたくなかったからであると主張。ウィリス氏は、ウェイド氏と契約する以前から交際しており、ウェイド氏は契約翌日の2021年11月2日に裁判所へ妻との離婚の手続きを申請しているとした。また、二人はカリフォルニア州のナパバレーやフロリダ、カリブ海に一緒に旅行に出かけ、ウェイド氏が二人分のクルーズ船のチケットを購入していたこともあったほか、アトランタ周辺をプライベートで一緒に出歩く姿も目撃されていると指摘。それぞれが所有する以外の部屋に同居していたと考えられており、ウェイド氏の離婚調停が続く間、継続的にロマンチックな関係を持っていたことが、情報筋によって確認されているとも説明した。
「ウェイド氏には彼女(ウィリス氏)に代わって訴追をするために数十万ドルが支払われていることから、ウィリス氏はこの訴訟から実質的かつ直接的な利益を得ている」「一方でウェイド氏は、ウィリス氏の代わりを引き受けて、ウィリス氏が許可したフルトン郡の納税者から支払われた金を使って、世界中でバケーションの費用を支払っている」と述べ、特別検察官との契約において「利益相反の回避を義務付けるフルトンの郡法に違反したことは明らかである」とした。
これに加えて、ウェイド氏には、立件の中心となっているRICO法どころか重罪の訴追を手がけた経験さえほとんどなかったとも指摘した。
さまざまな事由を挙げた上で、起訴を取り下げると同時に、二人とその組織が事件に関与する資格を剥奪することを求めるとした。
専門家からは、訴追に深刻な影響を与える可能性を指摘する声が上がっている。
ニューヨーク大学法科大学院の名誉教授、ステファン・ギラーズ氏は、アトランタの日刊紙「Atlanta Journal-Constitution」に、ウィリス氏の意思決定を詳しく調べる必要があると述べつつ、ローマン被告の主張が真実であれば「ウィリス氏は事件の捜査および起訴において利害の衝突がある」と説明。「彼女のクライアントであるところの公共および州が、彼女の立場に要求される独立した判断に信頼を置くことができないことを意味する」と見解を語っている。