トランプ前大統領の支持基盤、MAGAの目下の標的はバイデン大統領でもなく、ニッキー・ヘイリーでもない。国民的人気歌手テイラー・スウィフトにあるようだ。
ローリングストーン誌によると、トランプ氏に近い情報筋は、スターとの戦いを「聖戦」と呼んだという。
テイラーが11月の選挙に向けてバイデン氏の支持を表明すると睨んだもので、保守派メディアの司会者らは、テイラーの参入を遠ざけようと必死だ。
FOXニュースのパーソナリティ、ジェニー・ピロ氏は「なぜ彼女ほどの人気者が、ファンであるスウィフティーたちを仲間外れにするのか。ファンはあらゆる政治的イデオロギーにまたがっている。なぜ自分を一つの領域に置くのか」と主張。「だから関わるんじゃない。政治に関与するな!われわれはそんなところであなたと会いたくない」と語った。
同じくFoxニュースの大物司会ショーン・ハニティ氏は、「テイラー・スウィフトは、共和党が人種差別主義者で性差別主義者、同性愛嫌悪、外国人嫌悪、トランスフォビア、イスラム嫌悪で中絶の全面禁止を望んでいるという嘘をすべて丸呑みしているのかもしれない」とした上で、「彼女は2024年について決断をする前によく考えたほうが良い」と忠告した。
トランプサポーターらがテイラーの動向を警戒するのはもっともだろう。テイラーは2020年大統領選ではバイデン氏を支持している。さらに先日、ニューヨークタイムズは、バイデン陣営の選挙対策のウィッシュ・リストに、対トランプ戦略として、テイラーをはじめとする超大物セレブやSNSのインフルエンサー、著名な政治家からの支持が含まれていると報じた。
テイラーの影響力を示す世論調査もある。1月にニューズウィークの依頼で実施された調査では、有権者の18%がテイラーが支持する候補者に投票する可能性が「より高い」または「かなり高い」と回答した。一方、17%はテイラーが支援する候補者に投票する可能性は低いと回答。55%はどちらでもないとした。
なおトランプ氏自身といえば、私的な会話の中で、セレブの支持はバイデン氏の助けにならないと主張し、テイラーよりも自分は「人気」があり、支持者らはスターのファンたちよりも献身的だと話すなど、自信を示しているという。
投票行動で言えばトランプサポーターの方が熱心かもしれないが、人気ではテイラーに分がありそうだ。
SNSでは、トランプ氏は議事堂襲撃事件後の一定の期間、垢バンされたというハンデがあるが、フォロワー数はテイラーが上回る。
X:テイラー 9,500万人、トランプ 8,740万人
インスタグラム:テイラー 2.7億人、トランプ 2,377万人
Facebook:テイラー 8,029万人、トランプ 3,474万人
TikTok:テイラー 2,400万人、トランプ なし
Truth Social:テイラー なし、トランプ 659万人
集客力について、トランプ氏といえば2017年の大統領就任式をはじめ、参加者規模を誇張することで知られる。昨年11月にフロリダで開いた選挙集会では「数万人の支持者を前にしている」と豪語したが、会場のキャパシティは5,200人足らずだったことが、AP通信によって報じられた。
ニューズウィークによると、昨年7月にサウスカロライナ州で開いた集会には、5万人が足を運んだという。
一方、テイラーが昨年3月にスタートしたツアー「The Eras Tour」では、各コンサートの平均集客数は72,000人に達している。
マーチャンダイズでは、昨年12月時点でツアーのグッズ収入は2億ドルに達したと報じられている。
トランプ氏もグッズ販売に余念がない。昨年8月にジョージア州の拘置所で撮影されたマグショットをすぐにTシャツやマグカップにして販売したが、24時間で418万ドルを売り上げたと伝えられた。
2024年大統領選は、ホワイトハウス復帰を目指す77歳の候補者が、候補者でもない34歳の国民的スターと張り合うという、奇妙な展開を迎えつつある。