来月15日からスタートするトランプ氏の最初の刑事裁判について、ウォーターゲート事件の元検察官が「非常に異例だ」と驚きを語った。
事件は、不倫関係を持ったポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏に当時腹心だったマイケル・コーエン氏を通じて支払った口止め料に端を発するもので、検察はトランプ氏が業務記録を繰り返し改ざんしたとしている。罪状は34に上る。
審理の開始は当初3月25日を予定していた。しかし、連邦検察が最近になって事件に関連する数十万ページにおよぶ資料を提出したことを受け、事件を担当するフアン・マーチャン判事は今月初め、開始を少なくとも4月中旬に延期することに同意した。25日にマンハッタンの法廷で開かれた審問で、マーチャン判事は「地方検事局は連邦検察からの文書提出の遅れに責任はない」と述べ、トランプ氏側のさらなる延期の求めを認めなかった。
ウォーターゲート事件の元検察官、ニック・アカーマン氏が言及したのはこの翌日、マーチャン判事がトランプ氏に対して箝口(かんこう)令を発した件。CNNに出演した同氏は開口一番、「視聴者が理解しなければならないのは、これは非常に異例だということだ」と説明。自身の50年にまたがる法曹界のキャリアで「一度も起きたことがない」と語った。
マーチャン判事は26日の箝口令で、トランプ氏に裁判所スタッフや証人、その他事件に関わる人物について公に発言することを禁止した。判事自身とマンハッタン地区検事のアルビン・ブラッグ氏は適用外とされる。他の裁判を含めると、トランプ氏は半年足らずで3回も法廷から箝口を命じられたことになる。判事は「これまでの被告の裁判外の発言は、司法の運営に対するリスクを十分に確立している」とし、「こうしたリスクを防ぐために、より制限の少ない手段は存在しない」と必要性を説明した。
アカーマン氏は箝口令だけではなく、トランプ氏の判事に対する振る舞いの特異性にも言及した。
「それ(トランプ氏のような言動)が行われない理由は、ひとたび裁判官を軽視し、法廷で人々を軽視すると、自分自身を危険にさらすことになるからだ。 自分に判決を下すのは裁判官だ。 自分を刑務所に送るか、または保護観察を与えるかを決定できるのは裁判官だ」と述べ、「私が見てきた中でこんなとんでもないことをするのは、ドナルド・トランプだけだ」と語った。
さらに、トランプ氏の振る舞いは、司法を保護する上で憲法修正第1条が保障する言論の自由がどこまで許されるのかという問題について、裁判所に対処を強いるものだとも指摘した。
トランプ氏はこの日、Truth Socialのアカウントを更新し、「この判事は悪質な”箝口令”を発することで、法執行機関の武器化に反対の声をあげるという私の憲法修正第1条の権利を不当に剥奪しようとしている」と非難。「不正直なジョー・バイデン、メリック・ガーランドとその悪党どもは、国中で私を追いかけ、迫害しようとしている。私は何も悪いことをしていないことを誰もが知っているのに!」と投稿した。