保守派の間で盛り上がりをみせていたバドライトのボイコット活動は、とうとう終わりを迎えたようだ。
不買を呼びかけていた著名人の一人、ミュージシャンのキッド・ロックは4日、Foxニュースの番組にバドワイザーのスローガン「This Bud’s for you」の入った帽子を被って出演。「クールなキャップだろ。・・なんでかぶってるか分からない」と冗談めかしつつ、「われわれには、さらに大きな標的がいる」と語った。
昨年4月、バドライトがトランスジェンダーのインフルエンサー、ディラン・マルヴァニー(Dylan Mulvaney)をキャンペーンに起用すると、保守派を中心に不満が噴出し、不買運動へと発展。キッド・ロックが当時投稿したバドライト缶にマシンガンをぶっ放す動画は、5,000万回以上再生されるなど話題を呼んだ。
バドライトを展開するアンハイザー・ブッシュは、キャンペーンに関わった幹部を休職にし、CEOが釈明声明を発表するなど事態の沈静化に務めたが、保守派の怒りはおさまらず、6月には20年以上守り続けてきた国内ナンバー1の座から転落した。
キッド・ロックは番組で、バドライトのトップやアンハイザー・ブッシュのCEOと話す機会があったと明かし、「ちょっと混乱していたなど言いたがらないのは残念だ」と述べた上で、「彼らはひどい仕打ちを受けた」と語った。「私は回答を得た。利害関係のない場面で皆の仕事やスタッフに害を及ぼすことはしたくない。われわれが追求すべき企業はたくさんある」と、不買の終了を宣言。次の標的としてプラネット・フィットネスやベン&ジェリーズ、ターゲットなどの企業を挙げた。
プラネット・フィットネスは先月、「女性のロッカールームで男性が髭を剃っている」としてその人物の写真を撮影した女性が、会員規約に違反したとして会員資格を剥奪される出来事があった。
キッド・ロックは今年2月にもジョー・ローガンとの対談で、「ちょっと楽しんだだけだ。腹が立ったが、1日を台無しにするほどのものではかった」「お前らは何をやっているんだという感じだった」などと語っていた。アンハイザー・ブッシュのブレンダン・ウィットワースCEOとは5分間ほど話したいう。「友達になりたい、いっしょに遊びたい類のヤツだ」と思ったと述べ、ナッシュビルに来る際には自分を訪ねるように伝えた、などと明かした。
トランプ氏「セカンド・チャンスを」
トランプ前大統領もスーパーボウルを5日後に控えた2月6日、 Truth Socialへの投稿で「壮大なスケールの過ちで、非常に大きな代償を支払った」とバドライトのキャンペーンを咎めつつも、「WOKEな企業ではない」と擁護。退役軍人の雇用や農家の支援など、同社の取り組みを称賛し、「アンハイザー・ブッシュは偉大なアメリカのブランドで、おそらくセカンドチャンスに値するのでは」と、支持を呼びかけていた。
なお、こうした姿勢転換の背景には、共和党のロビイストの働きかけが噂されている。トランプ氏の投稿と日を同じくして、政治家や企業にアドバイス業務を提供しているジェフ・ミラー氏は、トランプ氏の息子ジュニア氏を中心に据えた寄付金集めのイベントを発表し、参加を呼びかけていた。アンハイザー・ブッシュは昨年、ミラー氏の設立した「ミラー・ストラテジー」に26万ドルの寄付をしている。