陰謀論者だった?トランプ裁判所前で焼身自殺

205

19日、トランプ前大統領の裁判が行われているマンハッタンの裁判所の前で、男性が焼身自殺をはかった。駆けつけた警官らが消化器などで火を消し止めたが、男性は同日、搬送先の病院で死亡した。

騒動が起きたのは午後1時半ごろ、陪審員12名と補欠が選ばれ、昼の休憩に入る前だった。ニューヨーク市警察の発表によると、男性は、裁判所の真向かいにある公園「コレクト・ポンド・パーク」で、パンフレットの束を地面にばら撒いた。その後、バックパックから缶を取り出し、液体を体にかけ、火をつけた。

周辺には、裁判を取材していた報道陣に加え、警官、トランプ氏の支持者らが集まっていた。SNSには、激しく燃える炎に包まれる男性の姿や、助けを求める通行人ら、消火活動を行う警官、焦げた男性がストレッチャーで搬送される様子など生々しい映像が投稿されている。

放火の瞬間を目撃した男性(73)はNBCニュースに対し、男性がパンフレットを撒いた際「われわれの気を引こうとしているようだった」と説明。液体をかぶるのを見た瞬間「何か恐ろしいことが起きると思った」「ベトナム戦争を思い出した」と語っている。

死亡したのは、フロリダ州セント・オーガスティン在住のマックス・アザレロ氏(37)。ニューヨークタイムズによると、アザレロ氏がマンハッタンを訪れたのは先週だったという。ワシントンスクエアパークやロウアーマンハッタンで「トランプはバイデンとともに、われわれにファシストクーデターをするつもりだ」などと書かれたプラカードを掲げ、抗議活動を行っていた。

Advertisement

メディアの取材に、(ビリオネアで共和党のメガドナー)ピーター・ティール氏と仮想通貨に関する研究に影響を受けていると説明したほか、「トランプもグル」「秘密の泥棒政治で終末論的なファシストのクーデターへと繋がる」などと語っていた。

焼身自殺を図った際に持っていたパンフレットには、ニューヨーク大学を「暴徒の前線」と非難する文言や、反政府的な陰謀論が書かれていた。ただし「明確な政治的方向性」を示す内容ではなかったという。

アザレロ氏は昨年、フロリダで3回逮捕されていた。SNSにはポンジスキームやビットコイン、ワクチン証明書に関する情報が投稿されているほか、2月に首都ワシントンのイスラエル大使館前で焼身自殺を図った空軍兵士アーロン・ブッシュネル氏を賞賛するコメントを残していたと伝えられている。自身のウェブサイトには、「トランプ裁判の外で体に火をつけた」と題した記事を投稿していた。

タイムズによると、母親が2022年春に慢性閉塞性肺疾患で亡くなる前は、SNSの投稿は、家族や旅行に関するものが中心だったという。

長年の友人はニューヨークポスト紙に、アザレロ氏は精神疾患の問題を抱えており、孤独だったと語っている。「いい奴だったが、いつも政治的だった」と振り返った。チェスが得意で、オンライン上のゲームでトップクラスの成績をおさめていたという。

2022年末には「高収入を得ていた」テクノロジーコンサルタントを仕事を辞めていた。昨年は精神療養施設で治療を受けたが、数日後に退院していた。友人は、2023年3月に起きたシリコンバレー銀行の破綻後、「ピーター・ティール氏とすべてを結びつけ、超現実的な世界に潜り込み、クレイジーな陰謀論を投稿しはじめた」と語っている。

警察は今回の事件について、特定の人物を標的にしたものではないとの見方を示している。裁判所の周囲で、爆発物など危険物も発見されていない。

Mashup Reporter 編集部
Mashup Reporter 編集部です。ニューヨークから耳寄りの情報をお届けします。