ニューヨーク州の最高裁判所は25日、大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン受刑者について、一審に「過ち」があったとして2020年の有罪判決を4-3で覆した。
一審の担当判事が告訴内容に含まれない証人の召喚を許可したのは誤りだったと認定し、「重大な過ちに対する救済は新たな審理である」とした。
AP通信によると、検察側は「再審に全力を尽くす」と声明を発表している。
ワインスタイン氏は2018年に逮捕、2006年と2013年の2人の女性に対する性的暴行をめぐって、強姦罪や性的暴行罪など5つの罪で起訴された。
ワインスタイン氏は同意があったとして容疑を否定したが、2020年2月、プロダクションアシスタントのミリアム・ハーレイさんに対する第一級犯罪的性的行為罪(criminal sexual act in the first degree)と女優のジェシカ・マンさんに対する第三級強姦罪(rape in the 3rd degree)の2件について有罪評決が下った。
最も罪が重いとされた2件の捕食的性的暴行(predatory sex assault)およびジェシカ・マンさんへの第一級強姦罪(rape in the first degree)は無罪となった。同年3月に23年の禁固刑が言い渡された。
最高裁が問題としたのは、2人のほかにワインスタイン氏から性被害にあったとする追加3人の女性の証言を許可したことで、ジェニー・リヴェラ判事は賛成意見で「われわれは、告訴人以外の起訴されていない、過去の性行為の容疑に関する証言を第一審が誤って認めたと結論づけた」と説明。「裁判所の決定は、告訴人の信頼性を高める一方で、陪審の前で被告の人格を低下させる結果をもたらした」と述べた。
「司法制度では、被告は起訴された犯罪にのみ責任を負う権利を有しており、犯罪性向の立証のみを目的とした過去の悪事の主張は認められない」としたほか、他の女性らの証言を許可した第一審の判断は「司法裁量権の乱用」であり、陪審の前で被告の人格を損なったと述べた。
弁護側は控訴に際して、「起訴された行為ではなく、過去の悪事についての関係のない、偏見を抱かせる未検証の主張に基づいて裁かれた」と主張していた。
『パルプフィクション』や『英国王のスピーチ』などを数々のヒット作を手がけた大物プロデューサーによる性的暴行やセクハラ疑惑が浮上したのは2017年。ニューヨークタイムズやニューヨーカーの調査報道をきっかけに元従業員から女優、業界関係者まで90人以上が被害を告発し、#MeToo運動のきっかけとなった。
疑惑は過去30年におよび、この中には女優のグウィネス・パルトローやアンジェリーナ・ジョリー、アーシア・アルジェント、ルシア・エバンス、ミラ・ソルヴィノ、カーラ・デルヴィーニュ、レア・セドゥなど有名人も多く含まれている。
ワインスタイン氏は現在、州都オールバニーの北西約160キロメートルにあるモホーク矯正施設に服役している。ロサンゼルスで別の女性に対するレイプ裁判で禁錮16年の有罪判決を受けていることから、引き続き収監される予定だという。