米ABCニュースの看板キャスター、ジョージ・ステファノプロス氏は28日、自身が司会を務める番組で、今年の大統領選の「異常性」を心に留めるよう視聴者に訴えた。
ステファノプロス氏は「This week」のオープニングトークで「今まで刑事裁判を受けた米国大統領はいない」と切り出し、「機密文書の所持や隠蔽で刑事告訴された米大統領はいない。選挙を覆そうとしたとして連邦政府や州政府から訴追され、同じ罪状で2つの州で訴追された米大統領はいない。ビジネス詐欺や名誉毀損、性的虐待で何億ドルもの罰金を支払った米大統領はいない」とトランプ氏が直面している裁判を列挙した。
「米大統領選が今まで、選挙集会で起きている事以上に法廷で起きている事によって定義づけられたことはなかった」とし、現在の状況について「異常のスケールは圧倒的で、感覚が麻痺してしまうほど」と述べた。「反射的に通常の選挙と同じように扱ってしまう」可能性があるが、「今年の選挙で起きていることは、そうではない」と警告。「民主主義の根幹を担う人々が南北戦争以来目にしたことのない形で試されている。候補者やメディア関係者、国民に対する試練だ」と呼びかけた。
バイデン大統領は前日、ワシントンD.C.で開催されたホワイトハウス記者会夕食会で、メディア関係者に「現在の深刻な状況のために立ち上がってほしい」と述べ、政治をセンセーショナルなものにするより、「危機に瀕しているものに焦点を当ててほしい」と要請した。
さらに党派に限らず「民主主義を確実に存続させるための重要な役割」を果たすよう求めたほか、偽情報時代においては、信頼できる情報を発する記者の役割が今まで以上に重要になると語った。
一方のトランプ氏も、バイデン氏は政敵に対して司法を武器化していると主張し、選挙集会で「ジョー・バイデンは民主主義に対する大きな脅威」と繰り返し呼びかけている。
AP通信が昨年12月に実施した世論調査では、11月の選挙結果が「民主主義の未来」に重大な影響を与えると考える有権者は62%で、民主党支持者(72%)と共和党支持者(55%)ともに高い懸念を抱いていることが示された。
ただしその理由は異なり、シカゴ大学のマイケル・アルベルタス教授は「左派の側からすると、権威主義的な大統領が選出されることを懸念している」のに対して、「右派からすれば、政府のオーバーリーチ、大きな政府、自由への脅威」を感じていると指摘している。