5日、サンクトペテルブルクで開幕した国際経済フォーラムに出席したロシアのプーチン大統領は、記者らの取材でトランプ米大統領の刑事訴追に言及。米国で司法制度が政敵叩きに利用されているなどと語った。
不倫関係を持ったポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏に支払った「口止め料」を不正に処理したとされる事件で、ニューヨークの陪審は先月30日、34の罪状すべてにおいてトランプ氏を有罪とする評決に達した。トランプ氏は根拠を示さずに裁判を「政治的訴追」「司法の武器化」といった言葉で非難を続けている。評決の直後に支持者らに送ったメッセージでは「政治犯」にされたと主張し、寄付を呼びかけた。
CNBCによると、プーチン氏はトランプ氏の訴追について「直接的な証拠もなく、何年も前に起きた出来事に基づいて作られた」とし、「司法制度を内部の政治闘争に利用しているのは、世界中で明らか」と主張。「国家も政治システムも、彼ら(アメリカ)は内側から燃え尽きようとしている」と語った。
大統領選について、バイデン氏かトランプ氏のどちらが当選するのか望ましいかを尋ねられると、「基本的に気にしていない」と回答。選挙結果は「重要な意味を持つとは思わない」と述べ、「正直に言って、選挙後にアメリカの対ロシア政策が変わると考えるかと言われれば、そうは言えない」と加えた。「アメリカ国民が選ぶいずれの大統領とも我々は協力するつもりだ」と語った。
プーチン氏は、今年2月の国営放送のインタビューで、バイデン氏の当選が望ましいと述べ、「経験豊富で予測可能だ。オールドスクールの政治家だ」と評価を語っていた。
今回、バイデン氏について「オールドスクールの政治家」と改めて述べる一方、トランプ氏については「特別なつながりはない」と説明。「彼が大統領としてロシアに大規模な制裁を科したことや、中距離および短距離核戦力の条約から離脱したという事実は変わらない」と加えた。
ロシアは否定しているものの、米政府は、2016年大統領選でロシアがサイバーアタックを通じて選挙介入をはかったと主張。退任を目前に控えたオバマ氏は、ロシアに対して外交官の追放を含む制裁を科した。
さらにトランプ政権発足後まもなく、ロシアの選挙介入に加え、トランプ陣営がロシアと共謀した疑惑が特別検察官による捜査に発展した。捜査を率いたロバート・モラー特別検察官は2019年4月、約2年間にわたる捜査をまとめた報告書で、ロシアによる選挙介入は主に、トランプ氏が有利になるよう、対抗馬のヒラリー・クリントン氏を貶めるなどのソーシャルメディアキャンペーンと、ロシア情報機関によるクリントン陣営のコンピューターハッキングおよび侵入により盗み出した資料の公開を通じて行われたと報告した。ただし、トランプ陣営の共謀については、立証されなかったと結論づけた。