トランプ前大統領は15日、オハイオ州選出のJ.D.バンス上院議員をランニングメイトに決定したと発表した。
「長くよく考え、たくさんの素晴らしい才能を検討した末に、私は米国副大統領の地位に最も相応しい人物は、オハイオ州のJ.D.バンス上院議員であると決意した」
バンス議員は1984年オハイオ州生まれ。地元の高校を卒業後、海兵隊に入隊した。オハイオ州立大学、イェール大学ロー・スクールで学び、企業弁護士、テック業界でベンチャーキャピタリストとして働いた。2016年の選挙ではトランプ批判を展開したが、その後サポーターに転じ、2022年の中間選挙でトランプ氏のエンドースメントを得て上院選に勝利した。
上院選に際して実施された対抗馬との討論会では、共和党のリンジー・グラハム議員が提案した妊娠15周目の中絶を全国的に禁止する法案を支持し、1月6日の議事堂襲撃事件に関する議会委員会の調査をトランプ氏への「政治的攻撃」と非難した。
ラストベルトの生い立ちを綴った回顧録がベストセラー
2016年に出版しベストセラーとなった「ヒルビリー・エレジー」では、かつて鉄鋼で栄えたオハイオ州ミドルタウンの白人労働者階級が抱える経済、ドラッグ、虐待、教育、家族崩壊といった社会的モビリティを阻害する問題を自らの体験をもとに綴った。
「わたしは白人であるかもしれないが、北東部のWASPではない。むしろ学位のないスコットランド・アイリッシュ系子孫の何百万人の白人アメリカ人に共感している…アメリカ人は彼らをヒルビリー、レッドネック、ホワイトトラッシュなどと呼ぶが、私にとっては隣人であり、友人で家族である」
バイデン氏の再選への道は、2020年にトランプ氏から取り戻したラストベルトの3州、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの勝利にかかるとされ、トランプ氏はこのうちの一つでも制すれば、ホワイトハウスに返り咲く可能性が高い。共和党が上院で多数派を奪還する上でも重要で、クックポリティカルレポートの評価では、ミシガンは五分五分、ペンシルベニアとウィスコンシンはやや民主党寄りとされている。トランプ・バンスコンビが勝利すれば、一気に共和党になびく可能性が指摘されている。
ミレニアル世代
現在39歳のバンス氏は、トランプ氏(78)の年齢の半分で、カマラ・ハリス副大統領(59)よりも20歳若い。8月に40歳の誕生日を迎えるが、勝利すればリチャード・ニクソンとならぶ史上2番目に若い副大統領となる。
ウクライナ支援に反対
4月に上院を通過したウクライナへの600億ドル規模の追加支援に反対票を投じた。ニューヨークタイムズに掲載されたオピニオンで、支援額は戦況を覆すのにはるかに足りないと主張。「納税者に多大な負担を強いておきながら、海外での失敗というお馴染みの結果をもたらす」「米国のビジネスに良いからといって血生臭い残酷な戦争を長引かせるべきだという考えはグロテスクだ。われわれは製品を海外の紛争地に送ることなく産業基盤を復活させるべき」と批判し、「1991年の境界線」に戻すというゼレンスキー大統領の目標は「空想」にすぎないとした。
若きアブラハム・リンカーン(by トランプ氏)
AP通信によると、トランプ氏はバンス氏のテレビのパフォーマンスを特に気に入っており、風貌について「若いエイブラハム・リンカーン」を彷彿とさせると語っていた。
家庭は?
妻で弁護士のウシャ氏とはイェール大学のロースクールで出会い、2014年に結婚。3人の子供がいる。ABCニュースによると、インド移民の娘のウシャ氏はサンディエゴで育ち、ロースクールのほかにイェール大学で歴史学の学士号、ケンブリッジ大学で修士号を取得している。ジョン・ロバーツ最高裁判所長官およびブレット・カバノー最高裁判事が控訴裁判所の判事だった時代にロークラークを務めた経験がある。現在の所属先はロサンゼルスが本社の法律事務所マンガー、トーレス&オルセンで、同社は同日、ウシャ氏が夫の副大統領候補指名に伴い、退社を決意したと明らかにした。