シカゴで開催中の民主党大会で、バイデン大統領の演説に割り当てられた時間帯をめぐって疑問や同情の声が上がった。
初日となった19日は、カマラ・ハリス副大統領の「サプライズ」登場に加え、ファーストレディのジル・バイデン氏やヒラリー・クリントン氏、アレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員、ラファエル・ワーノック上院議員(ジョージア州)らがスピーチを行った。バイデン氏が登壇したのは、東部時間の深夜11時半だった。
「WE(ハート)JOE」のプラカードを掲げた支持者からは「サンキュー!」の大歓声が上がり、娘のアシュリー・バイデン氏から紹介を受けステージに上がったバイデン氏が涙を拭う場面も見られた。
この日は、スケジュールが押したため、一部の議員やアーティストのパフォーマンスは割愛されたという。政治サイトのPoliticoは、「雑然とした進行」は議会議事堂における民主党の記者会見で「お馴染み」と指摘。「言うことは何も残っていないが、全員が言い終えたわけでもない」と運営を皮肉った。
バイデン氏の登壇について、ニューヨークポスト紙は「最後の不名誉」と報じた。会場でプラカードを持つナンシー・ペロシ下院議員を「ナイフを振り回したわずか数週間後、彼を称賛するためではなく、葬り去るためにやってきた」と揶揄した。
ハフポストの政治記者、イゴール・ボビック氏はXに「バイデンのプライムタイム外しは、あからさますぎるようだ」とコメント。世論調査専門家のネイト・シルバー氏は、ペンシルベニア州やミシガン州、ジョージア州など激戦区は東部時間に集中していることから、「メディアは東海岸に焦点を絞っている。今夜の民主党全国大会が長引いたのは、バイデンの存在感を低下させる以外の理由にほかならないと考えるのは無邪気だろうか」と投稿した。
バイデン氏の長年の補佐官は、Axiosの記者アレックス・トンプソン氏にテキストメッセージで「これはひどい。彼(バイデン氏)は文字通り選挙運動を立ち上げて彼らに引き渡したのに、彼をゴールデンタイムから外さなければならないのか」と、最大の功労者への扱いに不満をこぼしたという。
バイデン氏の50分間にわたるスピーチは、実質的な「退任演説」とも報じられた。
ニューヨークタイムズは、バイデン氏は、党員らが見せた熱狂は、長年の公務を通じて果たした達成だけでなく、撤退の決定に対する感謝であることを認めたくなかったかもしれないと心境を推察。「半世紀にわたって舞台に立ち続けた大統領にとって、不本意な退場を余儀なくされるこの瞬間ほど切ないものは想像できない。シカゴの温かい愛情が、たとえそれが本物であろうと、過去数週間に負った傷を癒すのには限界があるかもしれない」と綴った。
演説内容について、ペロシ氏ら党幹部に怒りを抱いているとする憶測を否定したものの、「わざわざ許しを与えようとしなかった」と指摘したほか、自身の実績を称賛し、トランプ氏を厳しく非難する内容は、「不幸な現実」を踏まえておらず、7月21日の撤退前に書かれていたかのようだと評した。
演説を終えたバイデン氏は、空港で記者からペロシ氏との関係を聞かれると、「彼女とは話をしていない」と答えたという。