1日夜、ニューヨークで開催される副大統領候補者討論会は、大統領選「最後の目玉イベント」として国民の注目を集めている。
対決するのは、ミネソタ州のティム・ウォルズ知事(60)とJDバンス上院議員(40)。ともに中西部出身だが、両者のキャリアは大きく異なる。
高校教師でフットボール部のアシスタントコーチだったウォルズ氏は、2007年から2019年まで下院議員を務めた後、2019年にミネソタ州知事に就任した。副大統領候補に指名される前、トランプ氏とバンス氏に「ウィアード」(変人)というレッテルを貼り、ハリス氏の選挙戦を盛り上げた。教師やコーチを経験してきた親しみやすさや庶民派の一面が、ペンシルベニア州やウィスコンシン州、ミシガン州の「ブルーウォール」を制する決め手になると見られている。
一方のバンス氏は、母親が薬物中毒の問題を抱え、祖母に育てられるなど複雑な家庭環境で育った。地元の高校卒業後、海兵隊に入隊。オハイオ州立大学からイェール大学ロースクールに進学し、テック業界のベンチャーキャピタリストとして活躍した。2016年大統領選では反トランプ派だったが、その後サポーターに転じ、トランプ氏の支持を得て、2022年中間選挙で上院議員に選ばれた。ラストベルトの白人労働者コミュニティとしての生い立ちや問題を綴った回顧録「ヒルビリー・エレジー」がベストセラーになった。
トランプ氏の「攻撃犬」とも評され、子供をもたない女性を揶揄する「チャイルドレス・キャットレディ」や「移民が猫を食べている」など過激な発言が物議を醸している。
戦略は?
バンス氏の陣営は、20年以上政治家の経験を有するウォルズ氏を「非常に上手いディベーター」と見なしており、1ヶ月かけて準備を進めてきた。
FOXニュースだけでなく、NBCやCNN、CBSなど主流メディアの番組に頻繁に出演し、30回以上開催した選挙集会を開催している。集会では後半にメディアのQ&Aセッションを盛り込み、ディベートの腕を磨いてきた。
バンス氏は討論会で、州兵の軍歴や中国への渡航歴、ジョージ・フロイド殺人事件後に起きた暴動への対応のほか、ハリス/バイデン政権の移民対策、プログレッシブ派の政策について追求するとみられている。
模擬討論でウォルズ氏役を務めたトム・エマー下院議員(共和党、ミネソタ州)はThe Hillに、「ウォルズを叩きのめし、過激なリベラル派であることを暴露する準備が整っている」とバンス氏の仕上がりに太鼓判を押した。
一方のウォルズ氏は、中西部インディアナ州出身でハーバード大卒のピート・ブティジェッジ運輸長官(42)をバンス役に据え、討論会の準備を行なってきた。
ブティジェッジ氏はニューヨーク・タイムズの取材に、討論会ではバンス氏の「フェイク・ポピュリズム」に焦点を当てると意気込みを語っている。
CNNによると、バンス氏を「ドナルド・トランプに魂を売った」人物として描写するほか、保守派のシンクタンク、ヘリテージ財団の主導で作成された次期政権に対する行政改革提案「プロジェクト2025」との関係や中絶問題、トランプ氏が掲げる政策を攻撃する計画だという。
ただし懸念材料も伝えられている。同局は、ウォルズ氏は大舞台を前に「神経質」になっていると関係者の声を伝えたほか、Politicoも、弱みや失策を指摘された際「過剰に自己防衛し、会話を中断させる」傾向があると指摘。ある人物は、トランプ氏とのディベートを成功させたハリス氏ほどの「ユーモアや強さは持ち合わせていない」とも語っているという。
2度目の大統領候補討論会は?
トランプ氏はSNSで、バンス氏にエールを送るようだ。
30日、Truth Socialのアカウントを更新し「才気あふれるJDバンスと、極めて歯切れの悪いタンポン・ティム・ウォルズのディベートを個人的に実況する」と宣言している。
なお、NBCニュースは、トランプ氏が却下したハリス氏との2度目の討論会について、バンス氏の出来栄えが良ければ「嫉妬したトランプが、ディベートでのスポットライトの機会を求めて」申し出を受諾し、悪ければ「再度ディベートをする以外選択肢はないと思うだろう」と予測。バンス氏の発言で終わるのを良しと思うのは「極めて非トランプ的」と再対決の可能性を示唆した。