選挙まで約3週間と迫る中、カマラ・ハリス副大統領はメディア攻勢を加速している。
これまでインタビューの機会が少ないとして批判を受けてきたハリス氏は、先週、CBSの報道番組「60ミニッツ」をはじめ、ABCのトークショー「The View」、ハワード・スターンのラジオ番組、スティーブン・コルベアの夜のバラエティ「Late Show」など、硬軟織り交ぜた番組出演をこなした。その一方で、国内有数のポッドキャスト番組で、ダウンロード数が週500万回ともされる「Call Her Daddy」にも出演した。アレックス・クーパーがホストを務める同番組はデートや恋愛、性やゴシップといったトピックに加え、有名人を招いたインタビューが人気とされ、リスナーは主にジェネレーションZとミレニアル世代の女性と言われる。
一連の出演の効果は不明だが、今週に入ってハリス陣営にとってはネガティブなデータが報じられている。
ニューヨークタイムズは12日、自社の世論調査をもとに、ハリス氏に対する黒人有権者の支持率について、撤退前のバイデン氏に比べて改善したものの、2020年の92%から78%へと低下しており、このままでは激戦州における勝利が危ういと報じた。
さらにその翌日、ハリス氏に対するヒスパニックの有権者の支持率は2016年の68%から56%に減少し、民主党にとって「危険なほど低い水準」に突入していると伝えた。
いずれの人種においても、男性の支持率の低下が著しいことが示されている。
そうしたなか、ロイター通信は15日、関係者による話として、ハリス陣営が、SpotifyランキングでNo1に君臨するポッドキャスター、ジョー・ローガンのチームと会合を行なったと報じた。
ローガンの番組といえば、パンデミック中に新型コロナウイルスやワクチンに関して誤情報を拡散したとして厳しい批判を浴び、それを理由にニール・ヤングやジョニ・ミッチェルといった大物歌手らが配信元のSpotifyとの契約解消に動き話題になった。厳格な銃規制に反対する保守派で、YouGovの調査によると、リスナーの8割が男性、34歳以下が56%とされる。
Foxニュースによると、トランプ氏も同番組に出演をする計画を示しているという。
なお、ローガンは今年8月、「みんなが彼女をかついで、ソーシャルメディアの投稿は彼女一色となり、彼女に関するネガティブなストーリーをググってみても、何一つ見つからない」とハリス氏を取り巻く勢いについて語り、ハリス氏が勝利するとの予測を示した。
一方、トランプ氏については、銃撃事件で一旦は勝利を確信したものの、事件の記憶がたちまち「封じ込められた」と主張。インターネットの検索結果には否定的な記事ばかりが並び、「トランプを悪者と思っていない中立の立場の人が、彼についてググって記事を読み始めると、彼らの考えは変わるだろう。あなたはカマラが勝つと思うだろう」と語った。
ハリス氏のメディア戦略の転換と並行して、民主党がパニックに陥り始めているとの憶測も流れている。
The Hillは、つい1か月前までトランプ氏に対する勝利を楽観視していた民主党で、危機感がかつてないほど高まっていると報じた。
トランプ政権で首席補佐官を務めたミック・マルバニー氏はスカイニュースのインタビューに、「ハリス陣営の多くの民主党の高官がパニックに陥り始めているのが見て取れる」と主張。民主党は「本当に心配になるデータ」を目にしていると語った。トランプ陣営の発言からも懸念が感じられるとしつつ、民主党が抱く心配の方がやや大きいようだとの見方を示した。