11月5日に実施された大統領選では、トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領を下し、政権復帰を確実にした。7つの激戦州において、すでに4州でトランプ氏の勝利が確定し、残り3州も制する見込みが高い。さらに一般投票でも現時点でハリス氏を上回っている。共和党が一般投票で民主党を上回れば、2004年以来初めてとなる。
世論調査では近年稀に見る接戦が予想されており、ハリス陣営には当初楽観的な空気が流れていたと報じられている。トランプ氏の大勝の可能性を前に、ハリス氏の勝利に期待を寄せていた専門家やジャーナリストの間で問題の追求が始まっている。
CNNの番組に出演した民主党のストラテジスト、デイビッド・アクセルロッド氏は、「人種偏見」と「性差別」意識が影響を与えたと主張した。
「はっきり言おう。今回の選挙キャンペーンでは人種差別に訴えるところがあった。この国には人種的偏見と性差別がある。それが今回の選挙結果にまったく影響しなかったと考える人は間違っている」。
人権活動家で黒人コミュニティの指導者アル・シャープトン師は、MSNBCのインタビューで、「われわれはヒスパニックと黒人男性に関して正直にならなければならない。そこには多くの性差別がある。われわれは現実と向き合わなければならない」と語った。現時点の集計では、民主党は2020年に比べてヒスパニックの有権者の票を大幅に失っていることが示されている。
ワシントンポスト紙のコラムニスト、マット・バイ氏は、偏見に関する議論は当然あるとしつつ、「ヒラリー・クリントン同様、ハリス氏も明確なメッセージを持った完璧な候補者ではなかったことは認めざるを得ない」と候補者としてのあり方に言及。「トランプ氏に関して彼女が有権者に伝えたことで、すでに知られていないことは何もなかった。人々には彼女に投票することに満足と希望を抱く理由が必要だったと思う」と加えた。
一方、バイ氏と同様にポスト紙のコラムニストであるデビッド・イグナティウス氏は、バイデン氏の撤退の遅れが敗北の一因との考えを示唆した。
「バイデン氏が2023年秋に撤退し、強力な民主党候補を選ぶための本当の予備選を実施していたらどうなっていただろうという疑問が頭から離れない」。
FOXニュースのホワイトハウス担当記者、ジャッキー・ハインリッヒ氏によると、党内からはハリス氏が立場を明確に示せなかったことに加え、副大統領候補の選択の過ちを指摘する声が上がっている。
同氏の取材に答えた民主党全国委員会のリンディ・リー氏は、「シャピロ(ペンシルベニア州知事)が立候補していたらどうなっていただろうと考えている。ペンシルベニアのことだけではない。彼は有名な穏健派だ」とした上で、「彼を選んでいれば、ハリス氏がトランプ氏が主張するサンフランシスコのリベラル派ではないということを、アメリカ国民に示すことができたはずだった。しかし彼女は、実際に自身より左寄りのミネソタ州の人物を選んだ」と語った。
このほか、民主党のキャンペーン手法をめぐって、投票前から批判的に見る向きもあった。
オバマ政権の元顧問バン・ジョーンズ氏は選挙直前、CNNの番組で、セレブを呼び物にした選挙イベントに懸念を表明。2016年大統領選でも同様のイベントを開催したが、「その州を落とした」と指摘した。
「労働者階級の人々は時に、大規模でクールなコンサートに出かけて、ベビーシッター代を支払うか、投票に出かけるかを選択する必要に迫られる」とした上で「これらは住民の時間を削るのに役立った」「コンサートに出向くのではなく、家の扉をノックし、戦って欲しいと思っている」と述べるなど、不必要との考えを示した。
1日、ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた集会は、ラッパーのカーディ・Bがスピーチを行い、フロー・ミリーやグロリラなどのアーティストがパフォーマンスを披露した。最終日の4日には、激戦地区ペンシルベニア州フィラデルフィアの集会で、レディー・ガガやリッキー・マーティンがコンサートを開催。オプラ・ウィンフリーらが登壇し、ハリス氏への支持を呼びかけた。